はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第56章 遺伝子の活性化

受精した卵子は卵割を繰り返し、子宮へ運ばれて着床する。卵子と精子の遺伝子が合体して一対の遺伝子「DNA」となる。筑波大学の村上和雄教授はこの「遺伝子ON」の生き方を提唱されていらっしゃる。以下は著書「生命の暗号」の要約である。

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1 驚異の遺伝子

 1) 進む遺伝子研究

生命科学の研究はいますばらしい勢いで進んでいる。2010年ころまでには、ヒトの全遺伝子暗号の解読に成功すると言われてきた。ところが、解読が進むにつれ、話はそう簡単ではないことが分かってきた。

自分の力だけで生きている人は地球上に一人もいない。呼吸にしても、血液循環にしても、私たちが自分で工夫して働かせているのではなく、ホルモン系・自律神経系などが自動的に活躍しているから私たちは生きられる。

このホルモン系・自律神経系などの活躍を支配しているのは遺伝子だが、この遺伝子を操っているのは何だろう。ある遺伝子が働きだすと、他の遺伝子はそれを知って仕事の手を休めたり、いっそう作業ピッチをあげたりすることで全体の働きを調整している。

人間は知らないことを知りたい、分からないことを理解したいという本性があり、これがなくならない限り科学の進歩は止まらない。特に生命科学の場合は、新しい発見がすぐ技術に結びつき、家畜の改良や医薬に影響を与え、欲望を満たす手段にすぐ利用される。

そうなると、人間が欲望をコントロールするすべを身につかないかぎり、科学はもろ刃の剣になる。技術的には可能であるが、あまりにも不自然なことはやらないという自制心を持つ必要がある。

自分を支えてくれる様々なもののお陰で、生かされているという事実を知ることにより本当の自制心が生まれる。それに感謝して生きることにより、今まで眠っていた遺伝子がONになる、素晴しい人生が開けるだろう。

最近の遺伝子研究ですごいことが一つ分かってきた。「遺伝子のはたらきは、それを取り巻く環境や外からの刺激によって変わってくる」ということだ、正確に言えば、それまで眠っていた遺伝子が目を覚ますことでもある。

環境や外からの刺激といえば。一般的には物質レベルだけを考えがちだが、精神レベルでもあると考えられる。精神的な刺激やショックが遺伝子に及ぼす影響、つまり遺伝子と心の関係がこれから注目されるようになるだろう。

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 2) 遺伝子とは

体重60kgの人の細胞は約60兆個である。1キロ当たり約1兆個の計算をすると、生まれたばかりの赤ちゃんでも約3兆個の細胞を持っている。しかも、その細胞の一つ一つに、例外を除いてすべて同じ遺伝子が組み込まれていことになる。

細胞内の遺伝子はDNA(デオキシリボ核酸)という物質のらせん状の二本のテープ状で、そのテープ上に塩基(アデニン・チミン・シトシン・グアニン)と呼ばれる何百万個もの化合物で構成されている。ここには生命に関するすべての情報が記録されている。

遺伝子には30億の膨大な情報が保存され、本にすると千ページの本で千冊分に相当する。遺伝子にはタンパク質を作る暗号が書かれ、地球上に存在するあらゆる生き物は同じ遺伝子暗号を使って生き、細胞が必要とするタンパク情報すべてを蓄積している。

さらに、これらの遺伝子の構造と原理はすべての生物に共通している。地球上の200万種以上の生物は、カビも大腸菌も植物も動物も人間すべて同じ原理であり、あらゆる生物は同じ起源を持つことを示している。生命の暗号

人間の遺伝子のなかには、昔の爬虫類や魚類などの遺伝子も入っている。受精してから発生するまでに、胎児は母親の胎内で過去の進化の歴史をもう一度大急ぎで再現する。遺伝子は1分1秒の休みもなく働き、遺伝子が働かないと私たちは生きられない。

人間の遺伝子のうち、解明されたのはほんのわずかである。アデニン・チミン・シトシン・グアニンの文字であらわされる30億の情報が細胞を働かせるが、実際に働いているものはわずか5%程度と言われている。他はどうなっているかわからない。

一つの細胞の中心に核があり、その核の中に遺伝子がある。1個の受精卵が2個に、2個が4個に、4個が8個にと細部分裂が繰り返され、途中から「お前は手になれ」「お前は頭になれ」「お前は脳になれ」とそれぞれが手分けして母胎内で分裂を続ける。

どの細胞も人間一人の生命活動に必要な情報をもっているとしたら、爪の細胞は爪にしかならず、髪の毛の細胞は髪の毛にしかならないのはどうしてか。爪の遺伝子は爪になる遺伝子をONにして、それ以外はOFFにしていると考えられる。

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 3) 精神レベルでの影響

たとえば、強い精神的ショクを受けると、たった一晩で髪の毛が真っ白になってしまったという話を聞くことがある。一方で、「余命数カ月」と宣告された患者が、半年たっても1年たってもピンピンしているといったことが現実に起きている。

タバコを1本も吸ったことがない人が肺ガンに侵されたかと思うと、1日に百本も吸っても健康な人がいる。塩分の取りすぎは高血圧を招くはずなのに、塩辛いものが好きな人の血圧は正常のままということもある。

俗に「火事場の馬鹿力」といって、極限状況になると人間はとてつもない力を出す。そうかと思うと、どうしようもないボンクラ学生が、女の子を好きになったとたん、人が変わったようにバリバリ勉強し始めて、アッという間に優等生になったりする。

このようなことがままある。いろいろな理由付けされてきたが、これらのどれもが遺伝子の働きに関係し、しかも本人の考え方でどちらにでも転ぶ。そういう可能性があるということが分かってきた。

たとえばガンになったとき、「治るんだ」と思う人と「もうダメだ」と思う人とではガンそのものが変わってくる。ひどい高血圧なのに「俺の血圧は低いんだ」と頑固に信じているとなぜか症状が軽い。

こういうことに遺伝子が深く関係している。いまだに仮説の域を出ないが、そういう状況証拠がたくさん出てきている。いずれそう遠くはない日に、精神作用が遺伝子に及ぼす影響が明らかになる日がやってきそうなのだ。

私たちはその日がくるまで、指をくわえて待つ必要はない。よりよい生き方に役立つならどんどん利用すればいい。そこで、直接役に立つと思われそうな遺伝子の情報を述べていく。

遺伝子は細胞を分裂させたり、親の形質を子どもに伝えるほかにもっと身近なところで休みなく働いている。人間は言葉を発するときに遺伝子がはたらかないと話せない。言語情報を脳から取り出すときには遺伝子のはたらきが必要になる。

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 4) 生物の起源はみな同じ

また豚や牛の肉を食べても人間が豚や牛にならないのは、遺伝子が働いてくれるからである。人間が生きているうえで、遺伝子は普通に考えられている以上に直接的な働きをしている。

さらに、これら遺伝子の構造と原理は、すべての生物に共通していることである。地球上には200万種以上の生物がいる。カビの大腸菌も植物も動物も人間もすべて同じ起源をもつことを示しているように思われる。

遺伝子で興味深いことは、原理は同じなのにその組み合わせによって、二つと同じものがないことである。一組の両親から生まれる子どもには70兆通りの組み合わせがある。秀才と美人が結婚しても、「美男の秀才」が生まれるとは限らない。

別の言い方をすれば、あなたがこの世に生まれてきたということは、79兆という膨大な数の可能性のなかからたまたま選ばれてこの世に存在しているわけで、それだけでも貴重だということができるのである。

私たちは子どもを作ることを簡単に考えているが、生命が生まれるきっかけを与えることと、生まれてから栄養を与えることくらいで、あとは精巧に仕組まれた生命原理がはたらくことによって自然に育てられている。

それだけでなく、幸せをつかむ生き方ができるかどかも遺伝子のはたらきによると考える学者もいる。幸せに関係すると考えられる遺伝子は、誰の遺伝子にも潜在しているはずである。その遺伝子をONにすればいいのである。

人間はいつも前向きで元気ではつらつとしていると、すべてが順調にいくようになる。そういう心の状態はよい遺伝子をONにして、悪い遺伝子をOFFにするはたらきがある。最近よくいわれるプラス発想の意味も、この辺にあると言ってよいだろう。

私たちの体はどの器官もそれぞれの役割を持っている。それがしっかり果たされているときの人間は健康である。手足が仲たがいすることも、脳や心臓が威張ることもない。人間社会の組織もこの体の組織を手本にするとよいだろう。

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2 遺伝子が活性化するとき

 1) 遺伝子の目覚めとは

人間は60億という膨大な数の細胞からなりたっている。その相棒の中の核にある遺伝子は、約20億という膨大な量の情報が入っている。そのなかには、「こういう時にはこうはたらけ、こういう時は眠っていろ」という指令情報もある。

これを私たちは遺伝子のON/OFFという言葉で表現している。ほぼ無限といえる遺伝子がそれぞれどんな時にONになるのか、またどんな時にOFFになるのだろうか。近年遺伝子が人の性格や気質、行動にどうかかわっているかの研究が盛んになってきた。

たとえば、人間は思春期になると性ホルモンが分泌されるようになる。性ホルモンにより男は男らしく、女は女らしくなってくる。これはそれまでOFF状態だった性ホルモンの遺伝子が、いっせいにONになって働きだすからである。

体のなかにはある一定の時間がたつと働きだす遺伝子がある。これらは心とほとんど関係なく働き始める。おっぱいが膨らんできたり、髭が生えてきたりするのがこれである。ただ、それとて環境や心の影響を全く受けていないわけでもない。

遺伝子のON/OFFに精神作用が深く関係しているということは、今のところ仮説にすぎない。ヒト遺伝子の解明が進めば、明らかになってくるだろう。しかし、遺伝子にON/OFFそのものは仮説ではない。

いまから60年ほど前に科学上のすごい発見があった。「生きとし生きものは、待った菊同じ遺伝子暗号を使って生きている」という発見だ。カビも大腸菌も植物も動物も人間も、みな等しく同じ原理を使って生きていることがわかったのである。

私物の基本単位は細胞だが、細胞の働きは遺伝子によって決定され、遺伝子は同じ一つの原理で働いている。基本原理が同じということは、生物は間違いなく一つの細胞から始まったといえることである。

私たちが草木を見て心安らぎ犬猫に出会って親しみを感じるのは、あらゆる生物が期限を一つにする親戚兄弟だからかもしれない。科学者はこの発見を土台に生命の謎の研究に取り組み、いまようやくヒトの遺伝子の暗号を解読するところまできた。

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 2) 遺伝子の構造

ヒトの遺伝子暗号には約30億の化学の文字であらわされる情報が1グラムの2千億分の1、幅が1ミリの5千万分の1という微小テープの中に書き込まれている。1グラムの2千億分の1は、地球上の60億人分のDNAを集めてきても米粒1つにしかならない。

また、幅が1ミリの5千万分の1の細さといっても、DNAの5千倍も太い。遺伝子とは生命の設計図で、親から子へ、子から孫へとつながっていく生命のもとになる要素が遺伝子である。

生命の基本単位は細胞で、遺伝子は細胞の核という部分にDNAと呼ばれる物質として存在する。そして、DNAは棟とリン酸という構造の簡単な物交互につながった1本の長いクサリのようなものである。

特徴的なのは、この2本の鎖が右巻きのらせん状にからまり、はしごのようなっていることである。このはしごの踏み板に相当する部分に、生物のすべての遺伝情報が4つの化学の文字で書かれている。

4つの文字は、A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)、塩基と呼ばれる物質である。この4つの塩基はCとGがそれぞれきちんとペアを組んで、糖とリン酸からなる2本のテープから直角に出て二重のらせん状になっている。

遺伝子上に並ぶ30億のA,T,C,Gがあらわす情報を遺伝情報と言い、本にすると千ページの本が千冊分にも相当する。人間のような精緻な生き物の構造が、このわずか4文字からなる情報によって決められていること自体驚異的なことである。

さらの驚くべきことは、微生物も含めたすべての生物の遺伝の基本構造は全部一緒だということである。カビや大腸菌のようにわずか細胞の一個で生きている下等生物と、60兆個もの壮大な細胞集合体である人間とが、基本原理のうえでは全く同じである。

タンパク質は水とともに最も大切なもので、体の構成要素であると同時に体の中で起こるすべての化学反応に必要な酵素やホルモンなどの材料で、生命現象のもとになる物質である。遺伝情報とはタンパク質を作る暗号である。

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 3) 重要なアミノ酸

タンパク質は20種類のアミノ酸からできている。アミノ酸がどう組み合わされるかでタンパク質の性質が変ってくる。遺伝子DNAは20種類のアミノ酸をどう組み合わせるかを3つの文字で指示している。例えばATGはアミノ酸のメチオニンを指示している。

グルタミン酸はGAAまたはGAGで表わされる。細胞内に図書館があり、細胞は何をやるにもその図書館へ行って、何をいつどうやって作ればよいか学んで、学んだとおりに作業を始めている。本に書かれているのは遺伝情報であり、DNAはその本である。

ここでRNA(リボ核酸)が登場し、RNAはDANへのところ行って書かれた内容をそっくりコピ-し、そのコピーをもとにアミノ酸を材料にしてタンパク質を作る。タンパク質は生命の体を構成している最も基本的な物質である。

どんなたんぱく質をどのくらい作るかを指示しているのが遺伝子で、アミノ酸は20種類あるがそのうち12種類は体内で作ることができる。残りの8種類は外から取り入れなければならない。牛や豚の肉と人間の肉とではアミノ酸の組成が違っている。

私たちが豚肉を食べるとそのたんぱく質はアミノ酸に分解され、遺伝子の指令によってふたたび必要はたんぱく質に作り替えられる。このようにして、骨、筋肉、皮膚、臓器、器官が作られている。また体の中で重要なはたらきをするホルモンや酵素も作られる。

実験で大腸菌がブドウ糖から乳頭に主食を切り替えた時に、ブドウ糖があるときには情報の読みはじめ部分(オペレーター)に調節遺伝子によってつくられた特殊なたんぱく質(リプレッサー)がくっついて、そこから先の情報は読めない状態になっている。

ところがブドウ糖が供給されず、乳頭を分解して栄養源にしなければならなくなると情報が読めるようになる。リプレッサーが乳頭と結合するため、オペレーター部分の抑制が解除され乳頭分解酵素を作り始める。遺伝子は不必要なときは情報を読めなくしている。

大腸菌の実験で、抑制機能が遺伝子にあることが初めて分かった。これは電気製品のスイッチを入れたり切ったりするようなものだから、学者たちはON/OFFと言い出したのである。遺伝子のON/OFFとは、調節遺伝子がどう働くかの問題である。

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 4) 遺伝子の働き

遺伝子は親から子へ子から孫へと伝わるイメージが強いが、遺伝子は一分一秒も休みなく働き、生体の生命活動を維持している。遺伝子が働かないと私たちは即座に死んでしまう。なぜなら体内で起きるほとんどの化学反応が遺伝子の指令によっているからである。

「火事場の馬鹿力」を例にとると、普段50kgのものを持ち上げることが精一杯の人が、100kgの荷物を持ち上げたりする。精神的なレベルではなく、体の中でそれを可能にするだけの化学反応が起きている。

いままで50kgの荷物を持てるだけのエネルギーしか作らなかった遺伝子が、緊急時の指令で倍のエネルギーを作れと命じたからである。あらゆる生命現象とは、その時々の状況に対応する化学反応の結果である。生きているということはそういうことである。

化学反応は企業の化学工場でも行われている。私たちの生命現象は、生化学的にみれば化学工場で起きている化学反応と原理的には似ているが、決定的な違いは生命体の細胞の中では、常温、常圧、中性のごく自然な状態であらゆる化学反応が起こることである。

それを可能にしているのが酵素という物質である。酵素は一種の触媒で、特定の物質に作用して反応をスムーズに行わせる能力をもっている。酵素には際立った性質があり、結合する相手があらかじめ決まり、厳密に相手を選別する能力が備わっている。

ある物質を作らなければならない場合、通常の1億倍とか百億倍といったスピードで必要な物資を生産することができる。私たちの体は成人になれば身長や体重が増加しないため変化しないように思えるが、実は物凄いスピードで常に入れ替えが行われている。

酵素に指示しているのは遺伝子で、遺伝子に影響を与えられれば間接的に酵素のコントロールが可能になる。世の中で時々起こる奇跡的な出来事は、心の働きが遺伝子に影響を与え、それによってもたらされた超高速度の化学反応という見方もできる。

精神的なショックにより一晩で白髪になるとか髪の毛が抜けてしまうのは、明らかに遺伝子の影響によるものである。遺伝子は1分1秒の休みもなく髪の毛のタンパク質を作り続けているが、将来働くはずの老化遺伝子が急遽ONになったとしか考えられない。

このように遺伝子には、ONにした方がよい遺伝子とOFFにした方がよい遺伝子がある。理想は悪い遺伝子をOFFにして良い遺伝子をONにすることである。良い遺伝子をONにするには物事を良いほうへと考える、つまりプラス発想ということである。

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 5) プラス発想で遺伝子ON

プラス発想とマイナス発想がありプラス発想が推奨される。これはエントロピ-の法則で説明できるだろう。物質世界では一般的に秩序のあるものは秩序の無いものへと向かう方向性があるとされる。人間も物質で成り立っているからこの法則が当てはまる。

人間が生まれた瞬間から崩壊と死の方向へ向かうのは、秩序の無い方向へ踏み出すような遺伝子が体の中に存在しているからとしか考えられない。事実、体の中には細胞死のプログラムも備わている。

ふつう体は生きるための遺伝子が活発に働いて、エントロピーの増大を防ごうとしている。生きているということは、自然に放っておくと死と無秩序へ向かおうとするのを、秩序だった方向へ誘導する働きということができる。これをエントロピーの減少という。

エントロピーの法則をプラス発想、マイナス発想に当てはめると、プラス発想はエントロピーの減少、マイナス発想はエントロピーの増大へ誘導すると考えても差し支えないだろう。発想はどちらかを選ぶかでまるで正反対の結果を招く。

プラス発想で注意しなければいけないのは、困難や窮地に立った時である。物事が順調に運んでいるときは誰でもプラス発想ができる。つらい局面に立たされた時、その状況でどれだけプラス発想ができるかである。このような時こそプラス発想が必要である。

病気をした経験が自分にとって「良い方向へ展開する」と広い視野でとらえること、つまり自分の身に起きたことは「すべてプラス」という風にとらえることである。それを無理と考えるのは、現代人の欠陥の一つでもある。

科学があまりにも進歩したために、現代人は何事も合理的に割り切って考える癖がついている。合理を超えるもの、見えないものを感じ取る力が衰えてしまった。この世の中は合理性だけではない。合理を超える、目に見えないものが多いのである。

遺伝子がその最えたるもので細胞も直接目では見ることができない極微の世界である。膨大な遺伝子のうち、現在はたらいていると思われるのはせいぜい5%から10%である。あとはなにをしているのかわからない。

進化の歴史が残りの部分に書かれているのか、今後の進化の可能性を残しているとも解釈できる。その意味不明の部分がおそらく遺伝子のON/OFFに関係していると思われる。現代の常識や科学の力でまだ解明されていないものも視野に入れて物事を判断する。

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3 病気の考え方

 1) バランスの崩壊

プラス発想の効果は病気の時に良く表れる。昔から言われる自然治癒力のメカニズムは不明な部分が多いが、遺伝子の働きが不可欠なことは確かなようだ。あなたはガンですと言われたら、精神力の強い人でも落ち込んでしまうものだ。

長い間ガン告知が本人にされなかったのは治療法が未熟だったこともあるが、明らかに患者へのショックを考慮してのことだった。いま告知が盛んになったのは、治療法が進歩して「病は気から」が正しいと認識されてきとことも大きく関係している。

昔からいわれる自然治癒力は、自分の体が病気を治していると表現されているが、「遺伝子が命令して直しているとも考えられる」ということは、体の中にはじめからそのようなプログラムがあるということになる。

私たちの体の中では、遺伝子にかかれていないことは起らない。書かれた内容はすべてが決定事項ではなく、一種のアドリブ部分があるに違いない。そのことは遺伝子に膨大な無駄な部分があることと無縁ではないように思われる。

病気は遺伝子の仕業だから、環境遺伝子も関係してくるので同じ遺伝子を持っていても発病しないこともある。ある時期ある原因で遺伝子がONになる。遺伝子の解析がもう少し進めば、かなりの確率で予測がつくようになり、精神作用の影響もわかるだろう。

脳で実際に働いているのは細胞や細胞間ネットワークであり、細胞の働きは遺伝子の指令によっている。脳のはたらきといえども、遺伝子がもつ情報によらなければならない。その意味で人間の一番の司令塔は遺伝子といっても過言ではない。

その遺伝子をON/OFFで制御できるとするならば、私たちはもっともっと遺伝子と仲良くする必要がある。極端に言えば、体に向かって「今日はご機嫌で調子がよいようだね」などと、話しかけることも無駄ではないだろう。

視覚で天気のいい悪いをキャッチし脳がそれを全身に伝えてといった手間をかけなくても、一歩外へ出た途端に細胞は心地よさを感じイキイキとしてくる。細胞そのものが一個の独立した生命体として生きている。遺伝子のON/OFFでこれは重要なことである。

元気のでる遺伝子をONにするには「感動する」とことである。感動とは喜びと心地よい興奮が一緒になったものである。感動すとき遺伝子は決して悪い方向へ働かない。感動することで良い遺伝子を活性化することができる。

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 2) バランスが大切

私たちは人を病気にする遺伝子も抱えている。たとえばガン遺伝子というのがあり、ガン抑制遺伝子も見つかっている。ガン遺伝子があってもガン抑制遺伝子がバランスを保っている。大切なのはバランスである。

ガン遺伝子が目に見えないところでガン細胞を作り始めても、それを抑制したり消滅する遺伝子が働いて、発病させない状態を保っている。これがバランスの取れた状態で、大きくバランスが崩れて時に支えきれなくなると、病気の加速度的な進行が始まる。

いままでそのきっかけを与えるものが遺伝外情報と考えられ環境因子と名づけられた。環境因子というのは、食生活とかタバコ、水、食品に含まれる化学物質などで、これらが危険と言われてきた。最近は環境因子の影響は個人差が大きといわれている。

タバコを1本も吸わなくても肺ガンになるというのは、肺がんガンを促進するような遺伝子を内部に抱えていたためだと思われる。これに環境因子が加わり、加速されると病気になる例がかなり多きくなるだろう。

むかしから「病は気から」という言葉がある。心の持ち方一つで、人間は健康を損ねたり、病気に打ち勝ったできる。つまり、心で何をどう考えているかが遺伝子の働きに影響を与え、病気になったり健康になったりする。

ほとんどすべての病気は遺伝子のはたらきに関係する。遺伝子が正しいかたちではたらかないとか、はたらいては困る遺伝子がはたらきだすのが病気である。はたらいては困る遺伝子をOFFにできれば病気にはならない。

私たちは人を病気にさせる遺伝子も抱えている。例えばガン遺伝子があり、一方でガン抑止遺伝子も見つかっている。ガン遺伝子があってもガン抑止遺伝子により、バランスが保たれている。他も大体そうなっている。

大切なのはバランスで、体の中で起きている変化はすべてをたどれない。例えばガン遺伝子は目に見えないところでONになって、ガン細胞を作り始めているかもしれない。それを抑制したり食する遺伝子が働いて、発病させない状態を保っている。

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 3) プラスの発想を推奨

これがバランスの取れた状態で、大きくバランスが崩れたときに、支え切れなくなって病気の加速度的な進行が始まる。そのきっかけを与えるものが遺伝外情報と考えられていた。遺伝外情報とは、食生活などに含まれる化学物質で危険と言われてきたものである。

わるい遺伝子にブレーキをかけよい遺伝子を活性化する方法として、「境遇や条件を抱えた人にでもできることといえば心の持ち方」しかない。しかも、心の持ち方は良くも悪くも影響を及ぼすらしい。病は気からといわれてきたが、体と心は相互作用がある。

基本的に遺伝子は老化しない。いくつになっても自分の才能を開花させる能力がある。悪い遺伝子をOFFにし、よい遺伝子をONにする方法として、どんな境遇を抱えた人にもできるのは「心の持ち方」をプラスにすることである。

遺伝子には「こういう時には働け、こういう時には眠っていろ」という指令が入っており、それを遺伝子の「ON/OFF」という。遺伝子ONの秘訣は物事を良い方へ考えること、すなわちプラス発想である。これが遺伝子に大きな影響をおよぼすと考えらえる。

悪い遺伝子にブレーキをかけて、良い遺伝子を活性化する方法として、どんな環境や条件を抱えた人でもできることといえば、心の持ち方しかない。しかも心の持ち方は良くも悪くも条件を抱えた人に大きな影響を及ぼすらしい。

最近では心と体の関連を否定する人はさすがに少なくなったが、多くの人は環境因子という外部的な目に見える要因にばかり目を向けている。でも遺伝子解読が進む二十一世紀は、心の持ち方が最大の問題になってくるだろう。

マイナスの発想は好ましくない遺伝子を働かせる可能性がある。阻害因子を取り除けば人間の能力は百倍にも千倍も発揮できる。人間の能力を抑える最大の阻害因子は、マイナス的なものの考え方である。

悪い遺伝子をOFFにして良い遺伝子をONにする方法として、どんな環境や条件を抱えた人にでもできるのは、「心の持ち方」をプラスにすることである。これが遺伝子に大きな影響を及ぼすと考えられる。

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4 遺伝子活性化の事例

 1) 身銭を切れ

村上教授は、研究室の人々によく「身銭を切れ」と進めているそうだ。身銭を切ることが自分のためになるからである。人間は心の中に非常に大きな力を持っている。その力をうまく引き出すには、時には自分を追い込むことも必要である。

窮鼠が猫をかむのは、自分の中にその力を持っているからである。自分で自分を追い込む一つの方法が身銭を切ることである。本当のプロになりたかったら、身銭を切ってみることだ。そして、石の上にも3年。

3年間身銭を切って打ち込めばたいてい芽は出る。それで芽が出なければ才能がないか運がないかである。たいていは目が出る。芽が出ればお金がついてくる。個人レベルで自分を追い込んでいくことも必要である。自分で最初に種をまかないと芽は出てこない。

遺伝子をONにする有効な無一つの方法は、ギブ・アンド・ギブの実践である。遺伝子をONに持っていきたければ、ギブ・アンド・テイクではなくギブ・アンド・ギブの方がはるかに効率的である。本当のギブは天から降ってくる。

ギブ・アンド・ギブの典型は母親と赤ん坊の関係だろう。母親は赤ちゃんにひたすらギブ・アンド・ギブで見返りを求めない。意識の上では求めないが、至上の満足感と幸福感をもらっている。それだけではなく、そういう心境の時に遺伝子はONになっている。

ギブ・アンド・ギブでやっている人の周りには人が集まってくる。集まって育ってファミリーを形成していく。ファミリーができると強い。この強さを実際に証明しているのがユダヤ人の社会である。

現代の科学研究は、一人の天才のひらめきをよりどころにコツコツと進めていうやり方では、大きな成果を上げられなくなっている。少なくても数人、ときには数二人がチームを組んで行う共同研究が時代の流れになっている。

理想とするファミリーは、一つの目的に向かって各自が自分の与えられて役割を、自らが進んで積極的に果たしながら、仲良く得たものを分け合っている姿である。あるのは役割分担だけである。このモデルは、お気づきの通り人間の体である。

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 2) Aの夢実現へ向けて

あたらしいものに触れるのは、自分の中に眠っていた遺伝子を目覚めさせる絶好の機会になる。私の経験で恐縮だが、高校時代に同じ写真部にいた同期の男「A」と同じ大学で出会った。Aはグリークラブへ入ったが、演奏旅行も発表会もやったことはないという。

Aに質問すると、ほかの大学のグリークラブの行事を説明し、他の大学並みに合宿や演奏旅行や発表会に参加したいと願っていた。グリークラブの部長に相談しても、難しいといい返事はない。他の部員も夢物語と真剣に考える様子はないという。

この時、私の遺伝子がONになった。「演奏旅行や発表会を実現するからグリークラブへ入れてくれ。ただし、音痴だから歌は歌えないのでマネージャーということで入部できないか」。演奏旅行や発表会を実現できるならと、部長に紹介され入部を許可された。

2年生の時に入部して練習風景を見ていると放課後のわずかな時間のみである。Aの意見を聞きながら集中的に練習する必要があるとして合宿を提案した。六月の三連休に千歳市の小学校で合宿練習をしてもらい、最終日に千歳少年院で施設慰問の発表会を開いた。

合唱部員は眼光鋭い院生が整列して号令で動く様に震えあがっていたが、なんとか練習の成果を発表できたようだった。Aと頻繁に打ち合わせを行い、そろそろ時期が熟したと夏休み前の練習後に道北方面への演奏旅行の実施を通知した。

そんなことができるのかと問われても、実施すると言い切った。宿泊場所は浄土真宗のお寺にお願いし、顧問の教授宅を訪れて演奏旅行の実施計画の承認と大学の応援を依頼した。Aと2人で下見に出かけ、各地の小学校で演奏会開催の打診と謝礼の交渉を行った。

出発まで父親の関係で知っていた会館を安く借りて泊まり込みで練習してもらい、昭和37年7月2日に21名の部員は札幌駅から列車で名寄へ向かい、小学校3か所で合唱を披露して稚内へ到着した。手違いがあり、お寺に断られて旅館に宿泊した。

3日は西稚内小学校と稚内高校と稚内高校定時制、4日は鬼志別小学校と中学校で演奏して浄願寺に宿泊、5日は浜頓別中学校で演奏して音威子府へ向かい、音威子府公民館で演奏して宿泊。6日は美深小学校と名寄高校で演奏し清願寺に宿泊した。

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 3) 不可能は逃げているから

7日は美深小学校と名寄高校定時制で演奏して清願寺で宿泊。8日は名寄小学校で演奏して18時23分に札幌へ戻った。大成功に終わった演奏旅行後の9月30日、宴会で飲んだ勢いも手伝い、11月に創部以来不可能とされてきた「発表会」の開催を宣言した。

日本著作権協会北海道支部で著作権料の教えを請い、入場料金は課税対象外の額にして販売枚数を増加させる作戦を取った。ゼニを払ってまでお付き合いくださる方々にアカデミックな合唱曲だけではなく、コミカルなステージや照明効果も楽しんでいただいた。

第一回施設慰問、第一回道北地方演奏旅行、第一回合唱発表会も、舞台衣装は学生服に統一した。入場券売上は475枚を記録したが観客はまばらだったが、当時としては異例の6,330円の収益を記録した。それもこれも身銭を切ったからである。

3年生になると「不可能と言われている地方講演を担当して欲しい」と打診があり、文化協議会の総務部長に迎えられた。文協音楽祭の準備と平行して副会長は道東講演会復活の相談を持ちかけた。なぜ復活すべき事業なのか2人は資料を集めて検討を続けた。

音楽祭が終わると副会長は趣意書と計画書をまとめ「道東にこだわらず道北へ目を向けよう。昨年グリークラブが開拓した地域で施設慰問形式を採ろう」と役員会へ提案した。この案は「講演」という名称に固執している他の役員の反感を買った。

講演会や研究発表などがなく、学術的内容が伴わないものは大学の行事とは云えないだろう。毎年のように大学側へ援助金の支出を要請していた役員のほとんどは実施不可能として乗り気ではなかった。私は徹夜で説得文書「地方公演に関する考え」をまとめた。

過去に中止となった地方講演は文協の行事だろうか、大学の行事だろうか。趣意書を文協で書き、計画書を実行内容や開催地を考えたのは文協である。大学側へ援助金依頼はかまわないが、文協の事業なら我々の手で実行しよう。私は身銭を切って下見へ出かけた。

道北地域施設慰問公演に「社会福祉デー協賛」のタイトルを掲げ、旭川4施設、名寄と浜頓別は1施設、稚内1施設と産業会館で音楽の夕べを開催した。当時生ジョッキのビールが150円の時代に、参加者の自己負担は千円。これが開拓者精神の覚醒だった。

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参考文献:生命の暗号(村上和雄、サンマーク出版)。