はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第11章 屈折赤道儀の調整
         と利用法

複雑な操作なしに同一天体を多人数へ観察させることが可能なため、1979年に小学校の教材に「五藤式赤道儀」を購入しました。使い方を知らないので、組み立て方と設置と調整方法を解説し、小学5・6年生が理科で学ぶ観測対象を解説しました。

1 はじめに

すベての児童は創造的に考え、行動する資質を内に秘めている。自然の事物・現象に興味を抱き、知的好奇心を燃やし、豊かな感受性と創造的な思考をはたらかせ、主体的に自然を探り、自然のきまりを理解しようとする。これは、自然に接する経験の中で自然に対する驚きから出発し、自然に接してはたらきかける機会が増えるにしたがって広がりをみせ深まっていくといわれる。

小学校の理科は「生物とその環境」「物質とエネルギー」「地球と宇宙」の三領域で構成されている。このうち『地球と宇宙』については対象が大きすぎ、手にとってみせられないことや実験ができないこと夜間の観測が必要なこともあり、ともすると教科書のみの学習となって天体に対する驚きや天体に接した場合の感動が与えられずに終わりがちとなる。教科書を中心として若干の資料やテレビ教材等を利用することにより、学習効果をあげることはできる。しかし、児童にどれほどの驚きを与えうるか、その驚きを学習意欲に結びつけられるかとなれば疑問が残る。

地球と宇宙について、肉身や友人・書籍や報道機関を通して断片的を興味本意の知識を得ている児童は、授業で扱う基礎的な内容に対してそれほど大きな驚きを感じえないだろう。ましてや、驚きから出発し、自己の目をとおして確認することにより体がふるえるという興奮をともなった感動を得て、基礎的な事項をおろそかにしては理解しがたい世界のあることを認識し、学習意欲を高揚させることが可能であろうか。現状では恵まれた一部の児童をのぞいて、不可能といわざるを得ないだろう。『地球と宇宙』という学習のなかで、児童にもっとも大切を『感動』を与えることは望むべくもないのである。

天体望遠鏡を購入した現在、その特徴を学びながら各種の実験観測の結果、わずかな時間で児童に多大の感動を与えることができる屈折赤道儀の利用方法を学年別対象別に考案してみた。理科教育活動の一助となれば幸いであり、講習等の機会をつくって赤道儀の扱い方を体得され、この高価な教材の有効な活用を願ってやまない。

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2 望遠鏡の形式

望遠鏡には、屈折型と反射型の二種類がある。物体からの光を集める働きをするレンズを対物レンズ、目のほうにあって対物レンズで焦点に集めた光を拡大する役目をするレンズを接限レンズと呼び、この組み合せの望遠鏡を屈折望遠鏡という。屈折望遠鏡の接眼レンズに凹レンズを使用したものをガリレオ式、凸レンズを使用したものをケプラー式という。ガリレオ式は像が正立するが視界が狭く、ケブラー式の像はさかさまになるが視界は広くなる。したがって、天体望遠鏡として多く使われているのは、上下が逆になっても違和感のないケブラー式である。

さらに、望遠鏡を支える架台の型によって三種類の区別をする。もちろん、それぞれの用途によって生まれたものだが、南北の子午線内にしか動かない「子午儀式」、上下と水平の二つの軸によって回転する「経緯台式」、地球の自転軸に平行に置く軸と、これに直角方向に回転する軸との二つの軸で支えられる「赤道儀式」である。赤道儀式は、天体の日周運動を追うにはもっともつごうがよく、大望遠鏡はすべてこの型を採用している。

本校の理振教材として購入した天体望遠鏡は『6.5cm屈折赤道儀』と呼ばれ、対物レンズの有効径が6.5cmの屈折型・ケプラー式・ドイツ型赤道儀で集光力は肉眼の86倍10.8等星までは観測可能である。

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3 赤道儀の特徴

赤道儀で天体を観測するには、その原理と若干複雑な調整方法や設置方法を習得しなければならない。設置方法を知ちずにのぞいたところで、意のままにならない動きと数多くの調整機能にふりまわされ、機器の能力に対する不満や失望しかでてこない。興味本意で三日坊主の素人がよくやる、月のクレーターをのぞき白鳥座のデネブを見る。天の川を端からながめまわしたりすい星をさがしまわる等というような、めまぐるしい動きには適さないのである。それが望みであれば、上下と水平方向自在に回転する経緯台式望遠鏡のほうがよく、人工衛星を見るならば子午儀式のほうがよいだろう。

本校が赤道儀を採用したのは、正確に設置することによって同一天体を複雑な操作なしに多人数に観察させることが可能だという点にある。天体は天の北極を中心として、時計の針の逆方向へ回転している。赤道儀の最大の特徴はこの日周運動を追うにはもっともつごうがよく、目的の天体を一度とらえると赤軽微動ハンドルを動かすことによってその天体を長時間経続して親側できることである。したがって、同一天体を数十人の児童に観察させることができるわけである。


赤道儀の操作技術は一度修得すると一生有効といえよう。あせらずに正確な技術を修得してこそ、児童へ強烈な感動を与えることができる。感動こそが学問に不可欠の要素であり、感動を考えずして人間形成における理科の果たす役割を実現することはできない。

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4 赤道儀の組み立て方

赤道儀は分解されて所定の位置に収納保管されている。組み立てがめんどうでも組み立てたままで保管するわけにはいかない。あとで説明するが、観測の用をなさなくなってしまうのである。赤道儀の組み立ては次の順序でおこなう。

4-1 架台部に三脚を取りつける

架台下の三脚取付部に三脚取付ボルト(ボルト・ワッシャー2・蝶ナット組)で三脚を取りつける。この作業を一人でするときは架台部を床に寝かせておこなう。三脚開き止め金具のあるほうを内側にして三脚をはめこみ、ボルトを完全に締めきらずにおき、三つの脚を取りつけたら床面に三脚をひらいて立てる。三脚をひらきすぎると架台部が落下し、二度と使用できなくなるので注意を要する。

4-2 載物台を取りつける

三脚開き止め金具を三本とも合わせ、交点穴に載物台のボルトを落しこみ、下から蝶ナットで固定する。つぎに、三脚取付ボルトを完全にしめつける。

4-3 重りを取りつける

架台の赤緯クランプと赤経クランプを締め付けて赤道軸下部にバランス軸をねじこむ。バランス軸の先端の尻止め(尻止めボルト・ワッシャー組)を取りはずし、バランスウエストをバランス軸に通す。いったんバランスクランプをしめて、バランスウエストを固定したのちふたたび尻止めを先端にねじこむ。

4-4 微動ハンドルを取りつける

短かい赤緯ハンドルと長い赤経ハンドルをそれぞれの微動ウォーム軸にさしこみ、ハンドル固定ターミナルで固定する。このとき、ウォーム軸のもみ穴に固定夕ーミナルがうまく入るようにする。

4-5 取付けハンドルを取りつける

鏡筒取付けバンドを開いて鏡筒をのせ、取付けバンドを閉じて取付けハンドルをしめつける。これで、形のうえでは赤道儀の組み立てが終ったことになる。組み立てる際には架台部や鏡筒を落したり、鏡筒に振動を与えることやファインダーにふれてはいけない。また、組み立てられた赤道儀は非常に重く、観測地点まで移動する場合は鏡簡をはずし二入で運搬すべきである。

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5 赤道儀の調整

組み立てられた赤道儀は、正しく調整しなければ観測の用をなさない。組み立てたままで保管できないのは、ぶつかりたりいじりまわされたりでいっそう調整が困難になるからである。赤道儀の各部は次のように確認して調整する。

5-1 平衡をとる

組み立てが終った赤道儀は、天体追跡をスムーズにおこなうためと器械に無理をかけないためバランスを正しくとる。まず赤経クランプをゆるめ、赤緯軸を水平にしてバランスウエストを動かしながら調整する。つぎに赤緯クランプをゆるめて鏡筒を前後に動かしながら調整する。

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5-2 光軸を確認する

星像は常に点でなくてはならないが、光軸が狂うと星像が尾を引くように見えて十分な観測ができなくなる。光軸が狂っているかどうかということは、鏡筒の中心線に対して対物レンズが正しく直角になってぃるかどうかということであり、不注意によって鏡筒に与えた振動や観測時の移動により狂う場合があるので時々点検する必要がある。

対物レンズにキャップをかぶせてアイピースを外した状態で接眼部よりのぞくと、自分の目と接眼部より入った光で対物レンズ面に白い点が見える。中心に明るい点とその周囲に淡くボンヤりした光茫が見える。接眼アダプターの中央に目をおいてこの光が同心円になって見えれば光軸は合っている。

光軸が狂っている場合の修正には、対物レンズ枠の上部三ヵ所に取りつけられてある光軸修正ネジを使う。押しねじをしめればレンズ砕は外に、引きねじをしめればその逆に作用する。この方法で二つの映像が正しく同心円に重なるように修正する。この作業は一人がのぞき一人がねじを操作すると楽にできるが、ねじをしめすぎると対物レンズが割れてしまうので注意願いたい。

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5-3 ファインダーの修正

ファインダーは目的の天体を探して正しく主望遠鍵の視界に入れるためのものであり、主望遠鏡とファインダーの光軸が正しく平行になっていなければならない。赤道儀を組み立てたままで放置すると十人中十人が狂わせてしまう。

狂っている場合の修正は、昼間千m以上離れた山の立ち木か鉄塔の先端などのできるだけ小さな目標を利用する。主望遠鏡に12.5mmのアイピースを差しこんで目標を視野の中央に入れる。次にファインダーをのぞき、同じ目標が十字線の交点に来るよう三本の光軸修正ネジでファインダーを動かす。一致したら光軸修正ネジのロックリングをしめて固定する。光軸修正ネジやロックリングは非常に微妙に反応するため、ほんの少しの力で光軸が狂う場合があるので注意しなければならない。しめすぎるとファインダー筒に穴があいてしまう。

ファインダーのピント合わせは、視度調整環をまわして十字線がはっきり見える位置にする。十字線にピントが合えば、同時に無限遠にもピントが合うように設計されているからである。

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6 付属品の種類と使用方法

付属品には標準付属品と特別付属品がある。特別付属品には、写真撮影や長時間の連続観測に必要なモータードライブ、星の分光スペクトル観測に必要な星用直視分光器、人工日食をおこさせて太陽のプロミネンスを観測するソーラープロミネンスアダプター等がある。本校の赤道儀には9種類の標準付属品がついている。

6-1 アイピース

付属品とはいえないが、アイピースと呼ばれる接眼レンズは三種類あり、接眼部に記号がついている。MH25mmはミッテンズエー・ハイダンス形式・焦点距離25mmのアイビースで倍率40倍。MH25mmは倍率が800倍で、MH6mmは倍率が167倍という意味である。観測の際は低倍率のものから使用するのがコツである。

最大167倍では倍率が低いと思われるかもしれないが、望遠鏡で大切なことは倍率ではなく口径が大きいことである。口径が大きいと暗い天体を明るく見ることができ、細かい点をはっきり確めて見ることもできる。天体の観測はたえず空気のゆれ(シーリング)によるさまたげを受けるため、通常専門家が使用するのは100~300倍という倍率である。すぐれた観測とは、高倍率ではなくいかに細かい点を見極めるかどうかということである。

6-2 天頂プリズム

高い位置にある天体を観察するときは、望遠鍵の傾きが大きいために姿勢が不安定となるのでL型の天頂プリズムを使用する。この場合、上下が正立像となり左右が倒立像になる。

6-3 サングラス

太陽は肉眼で直視できない。太陽の直視観測にはアイピース接限部のキャップをはずしてサングラスをねじこみ使用する。ただし、これだけでは安全とはいえない。

6-4 太陽観測用絞

太陽を望遠鏡で直視観測する場合は、口径を絞らないとサングラスが熱で割れてしまい確実に目玉焼きができあがる。対物レンズキャップの中央を押すと内キャップがとれる。内キャップを取りのぞき、口径40mmの穴があいた対物レンズキャップを主望遠鍵にかぶせて使用する。直視観測の場合には必ず使用するが、太陽投影板を用いる投影法には使用しない。太陽観測にファインダーを使用してはならない。

6-5 太陽投影板

輪状の支柱支えを接眼部ピニオンハンドル手前に取りつけ、支柱ささえクランプをしめて支柱に投影板をはさんで固定する。穴のあいている板が接眼部よりになり、スナップを拡げると投影板が前後するので白色投影板に投影された太陽が直径10cmになるよう調整して観測する。

6-6 カメラ雲台

星野写真を撮影する場合に使用するもので鏡筒取付けバンドにねじこむ。カメラを取りつけたら望遠鏡のバランスを取り直さなければならない。本校周辺は光害が酷いので満足な写真は撮れないだろう。

6-7 スパナ

大中小の穴があいている板状スパナの大は、極軸修正のさいにターンバックルをまわすためのものである。中は三脚取付けボルトをしめるとき、ボルトが空回りしないようにおさえるもの。小は本機に関係なし。

6-8 キャップ類

ファインダのキャップはレンズ保護とほこりよけで、対物キャップは同目的のほかに太陽観測用絞り兼用である。接眼部のキャップはほこりよけと湿気や小昆虫よけで、キャップを忘れるとクモが入りこんで巣をかけてしまう。清掃には多額の費用がかかるため,忘れた人の負担とするので充分注意すること。赤緯と赤経微動ウオーム軸に管状キャップがついているので無くさないように。

6-9 ビニールカバー

観測するために昼間調整を完了した望遠鏡はそのままにしておくとほこりがかかる。特に対物レンズについたほこりは観測を狂わすことが多いため、観測時間までかならずかけておくこと。

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7 赤道儀の据えつけ方

地球は地軸を中心に自転し、天体は天の北極を中心にして時計の針の逆方向へ日周運動をしている。望遠鏡を固定して天体を観測していると、その天体はたちまち望遠鏡の視界から消えてしまう。このことから、望遠鏡の回転軸(極軸という)を地軸と平行にすると天体の追跡が非常に楽になる。望遠鏡を据えつけるときは、極軸は地軸と平行にして天の北極を向いていなければならない。

赤道儀の架台に極軸を水平と垂直の二つの方向に動かす機構がついている。袈台部下の蝶ナットをゆるめ、方向修正クランプをゆるめると、架台は水平方向に回転する。ターンバックルの上下についているロッタリンタをゆるめて、ターンバックル(六角柱)を付属スパナでまわすと極軸は上下に動く。この二つの動きを利用して極軸を天の北極に向けることができる。

赤道儀の据えつけ方は三通りあり、観測する天体の対象と気象状況に合わせて選択しなければならない。太陽や月のように近くの天体と、1,500光年離れたオリオン星雲M42の観測では据えつけ方に若干の相違があって当然である。

7-1 簡易法

一般の観測の場合は、極軸がおおよその見当で北極星の方向を向いでいれば観測上それほど支障がない。北極星が見えないときや昼間などは、緯度目盛をその土地の緯度に合わせて磁針で北の方向へ向ける。磁針は真北を示さず日本では少し西にずれているため、磁針のさす北より本校の地磁気偏差角8度49分だけ東へずらす。

7-2 簡便法

赤緯目盛の指標を90度に合わせ、鏡筒と極軸を正しく平行にし、北極星を望遠鍵の視界に入れる。しかし、北極星は天の北極から52分ずれているから、北極星を視野の中央に入れたのでは極軸は天の北極を向かない。そこで、MH25mmのアイビースで見るとすれば、視野の半径は30分となり北極星を見ながら天の北極を視野の中央に入れることはできない。一方、ファインダーの視界は6度あるため半径は3度となり、3分の1だけカシオペア座 ∈ 星の方へ北極星をずらす。ただし、ファインダーの視野は倒立像であるため、見た感じでは大熊座 η 星の方へずらすことになる。

7-3 準正法

正しい点の北極を調べるには、北極星が子午線を通過する時刻を計算しその時刻に簡便法により方向を決定する。この計算は複雑なため一般には日の出と日の入りの時間を新聞で調ぺ、日の入りの時刻から日の出の時刻を引いて2で割るとその時刻に太陽は真南にあることがわかり、この時刻の影は正確に北を指している。この時刻を真太陽時と呼び我々が利用している日本標準時は東経155度の地点の平均太陽時である。

これらのことから、観測中に極軸を狂わされると小天体の観測は不可能となる。カシオペア座 ∈ 星や大熊座 η 星の位置がわからなくては修正できないし、土星を観測中に極軸を狂わされると再びとらえることは慣れない者にはできない。惑星は視直径があまりにも小さく、火星は大接近時でも26秒、普通の衝のころで110~120秒位しかない。運行している位置がわからなければ、グランドに落としたひとつぶのビーズ玉を見つけるよりむずかしいのである。小天体を観察する時は、正確な方角に据えつけなくては目的とする小天体の位置がわかっていてもとらえることは不可能である。したがって、簡便法だけでも修得しなければならない。

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8 赤道儀の手入れ

高価な精密器械であるため手入れや保管には特に慎重を期してほしい。手入れは方法を誤ると再び観測の用をなさなくなるので注意願いたい。

① 観測後レンズに露がついているときは、望遠鏡を室内へ入れて露が自然に消散した後対物レンズキャップをかぶせる。ハンカチなどでいきなり拭くとレンズ面にキズができる。

② 望遠鏡を使わないときはかならず接眼部にキャップをはめておく。クモが筒内に入ることやほこりと湿気で見えが悪くなるのをふせぐためである。

③ 望遠鏡を組み立てたままにして観測時間までおくときは、鏡筒を極軸に平行にして完全にクランプをしめておきビニールカバーをかけておく。

④ 対物レンズが汚れた場合は、羽毛か筆の洗いほぐしたものでほこりを掃き落とし、よく洗いさらした木綿の布にアルコールとエーテルを等分に混ぜたもの(アルコールのみでも可)をしめして軽く拭き、いったん乾いてから別の布で仕上げ拭きをする。仕上げ拭きをするときはハーッと息を吹きかけてレンズ面をくもらせ、それが一様にくもるようになるまで幾度も繰り返して拭く。

⑤ アイピースも対物レンズと同様に時々拭かなければならないが、レンズの小さいものには割り箸の先を尖らせて木綿布を巻きつけ、割り箸のさきが出ないように注意して拭く。

⑥ 対物レンズは特別の場合を除いては枠から出してはいけない。

⑦ 太陽投影板の汚れは中性洗剤で洗う。

⑧ レンズは湿気の多いところや密閉したところではカビが生えるため、空気の流通の良い乾燥したところにおく。

有効口径6.5cmの赤道儀は15万円もする備品である。現段階で購入できる小学校の天体望遠鏡としては最高級品といえよう。教育内容の軽減がはかられている今日、数年またずしてこれだけの機能を持つ天体望遠鏡は小学校で購入できなくなるだろう。それだけに有効な活用をお願いしたい。

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9 児童に感動を与えること主眼とした
     学年別対象別利用法

教育課程年間指導計画基底(移行措置に関する資料)によれば、札幌市における小学校の理科の単元中、昭和53年度二学年の「太陽の通り道」、昭和54年度三学年の「月の形や動き」等が上級学年へ移行されている。この結果、昭和55年度から『地球と宇宙』の学習のうち『天体』については四学年と五学年に主力がおかれることとなった。

具体的にいうなら、昭和55年度から使用する理科教科書で四学年は下巻の初めで「太陽と月」、五学年は上巻の終わりに「星」という単元をあつかう。このころは二学期の中頃であり、空が澄み切って観察観測にはもっとも適している時期である

四学年の「太陽と月」であつかう内容は、太陽の形と動き、月の形と動きである。太陽と月の形と動きの共通性と、月の日による形の変化に重点をおいた観察が主体となっている。五学年の「星」であつかう内容は、明るさによる星の分類(等星)と主要な星や星座の日周運動の観察、星座早見盤の利用法である。

これらの新教科書であつかう内容をもとにして、学年別に感動を与えうる天体の対象を考えてみた。できるかぎり二学期中頃の星空に限定して対象を選択したが、三学期初めころの宿泊学習に利用できるものも付加してある。

観測対象が定まり望遠鏡で児童に天体を見せる場合、留意しなければならないことがある。機器を大切にあつかうことはもちろんだが、守らせなければ児童に感動を与えるどころか逆に失望を与えてしまう。天体に興味を持たせるどころか、興味を失うことのほうが多くなるだろう。これは大人であっても同様である。留意するのはつぎのようなことである。

① 天体観測の事前に、星座やその観測対象となる天体についての知識を児童に与えておく必要がある。

② 事前学習には可能な限り星座にまつわる神話を利用し、時には大多数の児童が興味をもっている星占いなども活用すると効果があがる。

③ 事前に学習や観察をさせて予備知識を与えておかなければ、望遠鏡で目的の天体を見せても児童は失望し興味を失うだけである。

④ なぜなら、児童は大望遠鏡で撮影された星像になれている。本校の望遠鏡では写真同様に見えないというのが主な理由のひとつである。しかし、使い方ひとつで写真では味わえない感動を体験できるのである。

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9-1 第四学年『太陽と月』

児童はこれまでの学習で、日なたと日陰の地面の様子を比べ、日陰の位置は太陽の動きによって変わることに気づいている。また、自由に動くようにした磁針は北南を指して止まることを理解している。これらの経験を基にして、太陽や月の見える位置の変化を観察して太陽や月の動きに興味を持たせると共に、太陽や月の位置を方位と高さでとらえることができるようにする。また、太陽や月の動きを比べ、これらの一日の動きが似ていることを理解させるのがこの単元のねらいである。

9-1-1 太陽の観測

赤道儀は簡易法により据えつける。望遠鏡による太陽観測は「直接法」と「投影法」がある。太陽の観測は、うっかりすると非常に危険なため十分な注意が必要である。まず、太陽を望遠鏡の視野に入れるためにファインダーを使用してはならない。ファインダーはかならずはずしておく。他の目的があってファインダーをつけたままにしておく場合は必ずキャップをかぶせて太陽光線が入らないようにする。ファインダーを覗けば目玉焼き、覗かずにそばにいるだけでも焦点が合えばやけどをするしファインダー内の十字線が焼き切れてしまう。

・ 直接法

太陽観測用絞りを使い、対物レンズの口径を40mmに絞ったのちアイピースにサングラスをぬじこんで観測する。安全対対策はとられているが、5分間観測したら5分間望遠鏡を他方向へ向けてサングラスを冷やす。めんどうでも厳守しなければ、サングラスが熱で割れてしまい目玉焼きができても当局は関知しない。

・ 投影法

太陽観測用絞りとサングラスは必要ない。太陽投影版をとりつけ、白色投影版に投影された太陽が直径10cmになるよう調整する。アイピースはMH25mmを使用する。

投影法で太陽を望遠鏡の視野に入れるには、地面にうつる望遠鏡の影を利用する。接眼アダプターにアイピースをはめずに望遠鏡を太陽へ向け、地面にうつる影の形で方向を決める。望遠鏡が太陽の方に向いてくると影は細長くなり、正しく向くと丸い影の中に太陽が入ってきて影が白っぽくなる。

・ 太陽の形を見る

太陽の形を観察する場合は、目を損傷しないように遮光板(色硝子)を使用するが、望遠鏡で観測する場合は直接法より投影法がよい。太陽の形はもちろん黒点もきれいに観測できる。

・ 太陽の動きを見る

太陽の動きを見る場合に、方位磁針を用意すると太陽はどの方向へ動くのかが観測できるが,日の出から日没までの遮光板使用観測のほうがすぐれている。

・ 太陽の高さを見る

直説法と投影法にいずれでもよく、太陽の動きは赤経微動ハンドルで追跡する。最初に赤経目盛の数値を記録しておくと、時間の経過にともない赤経目盛りが変化するさまや望遠鏡の角度が変わるさまを観察できる。

・ 多大の感動を与えるもの

もっと感動するのは、皆既日食や太陽のプロミネンスの観測である。残念ながら今世紀は本道で観測できる皆既日食はなく、皆既日食がなければプロミネンスは観測できない。しかし、本校の望遠鏡にソーラープロミオネンスアダプターを取り付け、特定の単色光を使って人口日食をつくるなら美しい紅蓮の炎が吹きあがるさまを観測できる。ただし、アダプターは望遠鏡の三倍の価格でとても手が出ない。現地学習のさいに、中島公園にある札幌天文台にお立ちより願いたい。事前に連絡すれば見せてもらえるはずである。

9-1-2 月の観測

赤道儀は簡易法把により据えつける。月の動きについては昼間見える月で太陽の動きと比較して観察することができる。三日月・半月・満月は見える位置に違いがあるが、どれも太陽と同じように東の方から出て南の空をとおり西の方に入ることをとらえさせる。月の形・動き・方位・高さの観察は、ファインダーにより望遠鏡の視野にとらえた月をMH25mmのアイピースで見ると良い。

・ 多大の感動を与えるもの

月の観測でもっとも多大の感動を与えうるのは「月食」である。1979年9月6日は札幌で『皆既月食』が観測できる。およそ、18時5分からはじまる約2時間半の宇宙ドラマである。

月を望遠鏡でのぞいても丸い形と数多いクレーターが見えるだけであり、三日月のころと満月とではクレーターの陰影が異なるくらいであまり感動はしない。それだけにあきやすく、二度と見たいと思わなくなる。しかし、予備知識があれば興味は一変する。観測対象を限定して考えるならつぎのクレーターは非常におもしろい。

・ 満月のころ

チコ・クレーター
  直径90km、クレーター中心に真っ白く輝く白じょうが四方に伸びていて見事である。

コペルニクス・クレーター
  直径80km、嵐の海にある最も美しいクレーターで白じょうはチコ・クレーターよりも短い。

リスタルクス・クレーター
  月面で一番良く輝くクレーターで、北西に曲がりくねった谷が伸び複雑な地形になっている。

グリマルディ・クレーター
  月面の西側(向かって東側の端)にある大きなクレーター。内部の明るさは北側が明るく南側が暗くなっている。月食直後に見ると逆になっているという記録がある。

・ 新月のころ

アルプスの谷
 プラトー・クレーターのすぐ近くの谷は複雑で谷底に深い割れ目が走っている。おそらくグランドキャニオンよりもみごとであろう。

コメット・テール
 豊かの海にピッケリングとメシエという二つの小さなクレーターが並んでいる。この並んだ方向に、二本の白い筋がまるですい星の尾のように伸びていることから、コメット・テール(すい星の尾)と名づけられた。斜めに落下した隕石がメシエの穴をあけて月面の地下にもぐり、固い層ではねかえって斜めに飛び出した結果ピッケリングがつくられた。そのとき吐き出されたガスがコメット・テールを作ったと思われる。もしそうなら、メシエとピッケリングをつなぐ地下の天然トンネルがあることになる。

プラトー・クレーター
  月面北部にあり直径90kmm、内部は非常に対尾らで濃い灰色に見える。

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10-1 第五学年『星』

児童は第四学年の学習において太陽と月はともに丸い形をしており、絶えず動いていて一日の動きが似ていることを理解している。この経験を基にして星を明るさや色の違いでとらえ,その動きを方位と高さによる空間の広がりと時間の経過でとらえたり、星の動きの規則性を発見することに興味をもたせる。これらの過程を通して星の並び方が変わらないこと、太陽の通り道の近くに見える星と北極星を中心に回っているように見える星とはどちらも同じ方向に動いていて、一日たつとほぼ元の位置に見えることを理解させるのがこの単元のねらいである。

10-1-1 観察対象となる星

授業の進行状況を考えると、9月中旬から11月中旬の18時から21時までの間で観測の好対象となる星はつぎのものである。

こと座のヴェガ、わし座のアルタイル、白鳥座のデネブ、大熊座のゼーター星、やぎ座のアルファ星、ペルセウスのアルゴール、りゅう座のツバーン,金星

10-1-2 観察対象となる星座

星の観察により星の時間定位置が理解できる。そこで、星と星を結びつけて星座をとらえさせ、星座の形と動きを観察させる場合の対象は次のものである。

こと座、わし座、白鳥座、大熊座、やぎ座、ペルセウス座、りゅう座、カシオペア座

星座を的確におぼえることはなかなかむずかしい。観察した星を中心にして近くの星を結びつけて形づくり、ひとつひとつの星が星座のどの位置にあるかを理解させる。星座の絵をかかせ、大昔より続けられてきたように星座にまつわる神話を利用するほうが理解しやすく記憶を助けるだろう。

10-1-3 児童が発見するもの

観察対象としてあげた星の中には若干見えにくい四等星が含まれている。しかし、一週間から十日ぐらい継続観察を続けることにより視力は向上して、かならずなにかを発見することができるようになる。児童が肉眼観察で発見できるものは次のようなことがらである。

こと座のヴェガ
  色は「青白色」で、夜見える星の中ではもっとも明るい織姫星。

わし座のアルタイル
  色は「白色」で非常に明るい、彦星。

白鳥座のデネプ
  色は「白色」で銀河の中にあり、星の十字架の頭部のように見える。

大熊座のゼータ星
  色は「黄色か白色」に見え、注意してみると二つの星が並んでいる。

ペルセウス座のアルゴール
  色は「血のよう赤色」で、三日ごとに光の強さが変る星。

りゅう座のツバーン
  色は「白色」に見え、北極星とヴェガの中間に輝やいている。

金星
  夕方に一番早く見える最も明るい星で、明け方から時には昼近くまでも見え夜間は見えない。他の星と違うようだ。(児童には金星といわず、明けの明星とか宵の明星の観察と言うほうが印象を深める効果を期待できる。)

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10-1-4 観察結果を観測で実証

児童が肉眼で継続観察したものは、その児童にはどのように見えたかで実証しなければ正しいかどうかはわからない。こと座のヴェガは青白く、わし座のアルタイルが白く見えるのは本当だろうか。大熊座のゼーター星とやぎ座のアルファ星は本当に二つの星が並んでいるのだろうか。明けの明星と宵の明星は同一の星だろうか。

これらの疑問も観測の結果がなければ、いかなる人も証明することはできない。昔からそう云われてきたとか、天文学者が観測した結果そうであったというのは児童の興味や意欲の芽をつみとることにほかならない。己の目で確かめるという行為によってこそ興味や意欲の芽をはぐくみ、事実を確認した喜びを味わえるのである。これがもっとも大切なことでないだろうか。

7月7日の七夕は、織姫星と彦星が1年に1度逢うことができる日と伝えられ、大多数の人々はこの日に二つの星が接近すると考えているようだ。本州では7月7日、本道では8月7日が七夕であることから、実際は年に二度逢うことができる恋人同士。ロマンチックであるが現実はそう甘くはない。

計算によれば、織姫星は26光年の彼方で、彦星は17光年の彼方にある。9光年という距離があるものが、接近することは不可能である。しかし、悲恋物語を永遠に残すにはどうしてもヴェガとアルタイルの出演が必要なのである。

科学を知って神話を理解するのは楽しい。科学の限界を越えて夢を見るのもさらに楽しい。科学的な知識を持ってこそ夢見ることの許される世界もある。余談はさておき、児童が肉眼で観察したことは正しいのかを実証してやらなければなんにもならない

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10-2 星の観察

赤道儀は簡便法で据え付け、低倍率のアイピースを使用する。

こと座のヴェガ
  こと座の主星で青白く輝やく、織姫星とか北天のダイヤモンドと呼ばれる0等星。距離26光年、太陽のほぼ三倍の大きさで約50倍の輝きである。

わし座のアルタイル
  わし座の主星で白色に輝やく、距離17光年の彦星。太陽より二倍重く10倍の明るさで輝いている。

白鳥座のデネブ
  白鳥座の主星で白色に輝く1.3等星。距離1,500光年。太陽の50倍の大きさで、二万倍の明るさで輝いている。

大熊座のゼータ星
  北斗七星の柄の先端から二番目の星。ザールとアルコアが仲のよい兄弟のように寄り添っている二重星。目だめしの星と呼ばれ、注意すれば肉眼で見ることができる。

やぎ座のアルファ星
  やぎ座の主星で三等星四等星が並んでいる二重星。よほど目の良い人でなくては見分けられない。もし見えたら、つぎはこと座の主星ヴェガのそばにあるイプシロン星でためす。二つの五等星がやぎ座のアルファ星よりさらにくっついている。たいていの人には見えない。

ペルセウス座のアルゴ-ル
  ベルセウス座で二番目に明るいベーター星。不気味な赤い色をしている食変光星。二つの恒星がお互いの引力で共通の重心のまわりを公転しているため、約三日を周期として食現象を起こす。このため大昔から不気味な星と恐れられた。アルゴールは悪魔という意味である。

りゅう座のツバーン
  りゅう座の主星ツバーンは二等星で、ピラミッドが作られた時代の北極星である。西暦14,000年には、こと座のヴェガが北極星と呼ばれるようになる。現在の北極星は二等星と九等星の二重星であるが、口径12cm以上の望遠鏡でないと見ることはできない。

金星
  地球の内側を回っているため、太陽に対して地球の反対側に見えることはない。公転周期が早いので地球から見ると太陽の左側に見えたり右側に見えたりというように、太陽を中心にして左右に往復するように見える。惑星という名称は、天動説で説明できない動きをする星に対して、星空の中をさまよい歩くという意味で命名された。

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10-3 星座にまつわる神話

星座を覚えるためには、星座早見盤で形を調べて星の配置図をかかせる。星と星とを線で結び、その星座の絵をかかせると更によい。真っ赤な星アンタレスを心臓にもつ巨大なサソリの姿、銀河の岸辺をかけゆく天馬ペガサスや天使のような翼を持った乙女の姿をかかせる。ひとつひとつの星が星座のどの部分を形づくっているかを確認させる。次に、その星座にまつわる神話や伝説を調べさせたり話して聞かせるのもようだろう。なぜそのような形をしているのか、どうしてそのような名前がついたのかを児童は理解し、星座の記憶をより確実なものにするだろう。この結果、夜空をゆびさしながら話し合う親子の姿が再び見られるかもしれない。その姿を見たとき、教育者にのみ許される感動と満足感を味わうことができるだろう。

  こと座

ギリシャの楽人オルフェスの竪琴。ヘルメース神が波うちぎわで拾った亀の甲に、七すじの糸を張って音楽の神アポローンに贈った。アポローンはのちにこれを音楽の九女神の一人、カリオーペとの間に生まれたオルフェウスに授け、オルフェウスはそのことによって稀なる音楽の名手となった。彼が琴をかき鳴らすと野獣も荒々しさをやめ、木々は枝をさしのべて川は流れを止めて聞きほれた。

毒蛇にかまれて死んだ愛妻エウリディケを慕って冥府へ下り、冥府の王妃ペルセポネと約束した「陽の光を見るまで振り向かない」の誓いを守れず、オルフェウスは妻を再び地の底へつれもどされ、悲しみのあまり気がふれて野山をさまよい歩く。バッカスの祭りに酔ったトラキアの女たちに琴を引くように強いられ、断ったオルフェウスは石で打ち殺されてブルース川へ投げ込まれた。その死を惜しんだ神々が川を流れていた琴を星々の間にかけたという。

  わし座

大神ゼウスの雷鳴を持っているわしで、ゼウスが巨神族と戦ったときに手柄をたてたといわれ、古い製図には矢を爪でつかんでいる大わしが表されている。しかし、普通はゼウスに衆道趣味があり、自ら大わしに身を変えてトロイの美少年ガニメーデをさらってきたときの姿であると伝えられている。

  白鳥座

大神ゼウスは嫉妬ぶかい妻へラの目を忍び、白鳥の姿となってスパルタの王妃レーダのもとへ通った。レーダはのちにカストルとボルックスという双子兄弟(双子座)やトロイ戦争の起こりとなった美女ヘレーネを生んだ。

  大熊座

月と狩猟の女神ダイアナは乙女であり、連れている精女たちはみな乙女であった。その中に、アルカディヤ王リカオンの娘でカリストという美しい精女がいたが、いつのまにかゼウスの子を身ごもっていた。これに気づいたダイアナはカリストを大きな熊に変えて追い払った。カリストの生んだ子はアルカスと言い、15歳のときに森の中で一頭の大熊に出会った。それが母カリストで、我が子と知って懐かしげに走りよるのをアルカスは弓に矢をつがえてあわやその胸を射ようとした。これを見たゼウスは不憫に思い、つむじ風を吹き起こして天へまきあげ、アルカスも小熊の姿に変えてともに星座として北の空にすえた。

ゼウスの妻ヘラはひどくねたみ深く、憎んでいた母子が星になったのを見て我慢がならず、ほかの星たちのように日に一度海に入って休むことができないように、たえず北の空を廻らせるようにさせた。このため、大熊座も小熊座も永久に休むことができない運命となってしまったという。

  やぎ座

森の神パンはやぎの角とひげをはやし、山のほら穴に住んで音楽を好んだ。ある日神々がナイル河で酒盛りを開いたとき、あし笛シュリンクスを吹きながら踊って神々を喜ばせていると怪物ティフォンが襲ってきた。神々は思い思いの姿になって逃げたが、森の神パンはあわてて川に落ち魚に化けそこなった。このため水にひたった部分に尾が生えて魚となり、水から出ている部分はやぎというおかしな姿になってしまった。

  ペルセウス座

かって琥珀色の髪の毛をした美しい乙女メドウサは、女神アテーナのねたみを受けて大ゾウのような体にシンチュウの爪、体中に金のうろこをはやして髪の毛はヘビにされてしまった。さらに口からは火炎を吐き、ひと目でもその顔を見たものはたちまち石に化するという魔女になったため、英雄ペルセウスに首をはねられてしまう。神話の王子ペルセウスがメドウサ(額に当たるところが変光星アルゴール)の首をさげ、右手に大剣をふるあげて巨鯨に向かっている姿。銀河はマントのようにひるがえり、彼に救われた美姫アンドロメダとその父ケフエウス、母カシオペアを天上に並ばせた空想は雄大である。

  りゅう座

西の果てにあるヘスぺりデース園の金のりんごを守っていた龍。これを取りにきたヘラクレスに殺されたがその武功によって星座に加えられたという。

  カシオペア座

カシオペアは古代エチオピア王ケフエウスの妻で、アンドロメダという美しい王女がいた。母はそれを自慢するあまり海の精女をさげすんだ報いを受け、娘アンドロメダは海魔の人身御供となり、自分は椅子に腰掛けて両手を高く上げたまま、一日に一回空を回る運命になったという。ペルセウス座、アンドロメダ座、カシオペア座、ケフエウス座の一群を、エチオピア家の星座という。

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11 宿泊学習時に観測可能な対象

開校以来本校の宿泊学習は二月に計画されている。この時期の18時から21時ころには、全天宝石をちりばめたように無数の一等星が輝き、美しい星雲や星団も観測できる。滝野自然学園には口径8cmの屈折赤道儀がある。口径は大きく、ほとんど光害もないので感動が残る観測ができるだろう。ただ、風邪を引かないように注意。

11-1 美しい一等星

a 白色の星  大いぬ座のシリウス ふたご座のカストル
 b 青色の星  オリオン座リゲル
 c 黄色の星  小いぬ座のプロキオン
 d 橙色の星  ぎょしや座のカペラ おうし座のアルデパラン
 e 赤色の星  ふたご座のポルックス オリオン座のペテルギウス

11-2 美しい重星

太陽系から見て、たまたま同じ方向にある星が重なって見える場合と実際に二つの星が共通の重心を回りながら回転している連星とがある。

a ニ重星   ペルセウス座のエーター屋(青色と黄色〉
 b 三重星   アンドロメダ座のガンマ星(黄色色と白色と線色)

11-3 美しい星団

小望遠鏡で見えるのは、銀河系内の天体で不規則な形をした散開星団とまんまるな球状星団がある。散開星団は生まれて間もない若い星の集団で、球状星団は非常に年寄りの星の集まり散開星団は銀河附近に多く、球状星団は全天にちらばっている。

ブレアデス(すばる)星団・かに座のプレセペ星団・ペルセウス座にある二重星団は銀河の中にNGC869と884が並んだ見事な星団。ぎょしゃ座のM37とM38星団、ふたご座のM35星団など。

11-4 美しい星雲

銀河系内の星雲はガス物質の集まりで、光らない暗黒星雲、光っている散光星雲、超新星の爆発よると考えられる惑星状星雲などがあり、銀河系外の星雲は形から、楕円星雲、渦状星雲、棒状星雲、不規則星雲に分けられる。

アンドロメダ星雲、オリオン星雲は中心に四重星がかわいらしく光っている。おうし座のかに星雲M1(暗くてよほど目をこらさないと見えない)など。

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11-2 時期を選択して観測する対象

天体を24時間連続して観察できれば問題はないが、1日のうちで観測可能なのは約8時間であり、児童の生活リズムを狂わさない範囲はおよそ2時間である。この時間内で観測可能な対象は当然限定されてくる。しかし、1年を通して観測できることからすべてが観測の対象となりうる。春夏秋冬19時から21時までの間で児童に多大な感動を与えうる対象は次のとおりである。

11-2-1 美しい一等星

a 白色の星  りゅうこつ座の主星カノプス
 b 青色の星  オリオン座のベーター星 エリダヌス座のアケルナ
 c 橙色の星  うしかい座のアルクトウルス
 d 赤色の星  さそり座のアンタレス

11-2-2 美しい二重星

白鳥座のベーター星アルビレオンはオレンジとブルー、ヘルクレス座のアルファ星は赤とオレンジ、うしかい座のイプシロン星はオレンジとホワイト。

11-2-3 美しい星雲と星団

参考星団ではいて座の三裂星雲M200、いっかくじゅう座のばら星雲、白鳥座の北アメりカ星雲や網状星雲。惑星状星雲でよく知られること座のドーナツ型星雲M7、探すのに手間取ってもよくわかるアレイ状星雲など。

星団は、ヒヤデス星団、ふたご座のM35。球状星団ではヘルクレス座のM13、さそり座のM4、いて座のM22、へび座のM5星団など。

11-2-4 感動を呼ぶ大惑星

一番やりがいのあるのは木星。ただながめるだけでも楽しく初めて見る人はかならず感動する。まず、しまの見え方・しまの位置・しまの太さ・そしてしまの色を見る。眼がなれてくると、三本の縞模様と赤点がぼんやりと見えてくるし、四つの星が木星表面を通過するさまを観測できる。

土星のしまは木星にくらべて非常にぼんやりとしている。土星の環は真横から見られるときには消えてしまうが、傾きが大きいときには良く見る。環を注意してみると、カシニのすき間とエンケのすき間にわかれていて三重になっていることがわかる。

昭和55年7月から9月中旬にかけて、19時から21時の間に火星・木星土製・天王星は、さそり座の中を順行しているので観測しやすい。これらの惑星は地球の外側を回っているため、普通は西から東の方向へゆっくりと星空の中を動いていく(順行という)。しかし、その動きは途中でまったく止まったかと思うと、今度は逆の方向にしばらく動き(逆行という)、また止まったかと思うと再び同じ方向に動き出す。このような動きを繰り返すために、星空をさまよい歩く星という意味の惑星と名づけられた。外惑星の動きも天動説では説明できなかったのである。

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12 あとがき

中学二年生のとき、人類初の人工衛星「スプートニク」が打ち上げられたのを知り愕然とした。大型の人工衛星が地球を回り、月旅行はニュースにもならないと信じきっていたのである。なんと恐ろしい「鉄腕アトム」の影響だろうか。

宇宙に興味をもったその年の夏休み、手当たりしだいに本を読んで大学ノートにまとめ自由研究として提出したことを覚えている。虫メガネの凸レンズを使って望遠鏡を自作し星をながめたのもこのころである。疑問があると東京や旭川の天文台に問い合わせ、もっと基礎から勉強しなおすようにとさとされたことも何度かある。

今年の夏休み再び宇宙にいどんでみた。小学校4~5年生で扱うもっとも基礎的なことを調べてみることになったのは不思議な因縁と思える。最初は赤道儀の扱い方だけをくわしく説明する予定だった。このような長文になってしまったのは、思春期の思い出が強烈すぎたのであろう。あれが小熊座、こちらが大熊座と教えてくれた父はもういない。銀河の中に輝く白鳥座のデネブを見て、こどもはおじいちゃんの星という。いつの日か父がように子供へ伝えてやろうと思いながら第二章を書き続けてしまった。

専門外であり知識もとぼしく、古い記憶をたどりながらの説明も十分とはいえない。第一章はともかく第二章についていえば、誤りのないことを祈りつつ参考にしていただけるならこれにすぐる喜びはない。(1979年昭和54年8月記)

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※ 推薦

星や星雲と星団などに興味のある方は、「星への誘い」をご覧ください。圧倒される美しさに感動されるでしょう。

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