はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第49章 脳細胞の活性化

前章でご紹介した「三石巌の分子栄養学」の続編と児玉光雄氏の記憶術である。歳を取ると度忘れが目立つようになり、いま何をしようとしたのだろうと短期記憶が不得手になる。分子生物学で脳の記憶の仕組みを考え、脳を鍛えて記憶力を鍛えよう。

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1 栄養不足で疲弊している脳

 1) ビタミンの奇跡

ビタミンCを摂ると頭が良くなるというと、あなたは信じるだろうか。アメリカのセントドミニオン大学精神科のハーレル・キャップ教授は、ビタミン大量投与による知的障がい児の治療を専門にやっている。彼女はこの方面の研究で国際的に知られている。

実験はアメリカのある小学校で行われた。子どもの発達障がいを検出する知能テストの結果をIQの段階表に当てはめて、70以下では発達の遅れがあるとみなされる。キャップ教授はIQ70の境界にある子どもを対象に、ビタミンCの大量投与を試みた。

彼女は言葉が不自由な男の子を診察してIQを25~30と判定した。この子たちに数週間、大量のビタミンを与えてみたが改善の兆しが見えない。思い切って標準値の300倍という、ビタミンCは1500ミリ、B1は300ミリまで投与量を挙げてみた。

すると、数日後にその子は口をきき始め、一か月もたたないうちに読み書きができるようになり、9歳の時に小学校へ入学した。IQは90になり算数における進歩が目立ったという結果である。ビタミンで頭が良くなったのである。

1960年代に化学調味料「味の素」で頭が良くなるという説が話題となった。味の素の主成分であるグルタミン酸が脳内に多く存在するという情報が発表されたことから、これに飛びつく母親が全国に多く出現した。

しかし、1年もしないうちに味の素ブームは消えた。味の素に問題があるのではなく、脳で働くグルタミン酸は体内で作られたものだけが有効で、外部からのものは脳まで届かないことが突き止められたからである。

1990年代からマグロの目玉に多く含まれている「DHA(ドコサヘキサエン酸)」という脂肪酸が、やはり脳に特有な物質であるということで注目された。だが、このDHAが脳の中でどんな働きをしているのか、未だにはっきりと解明されていない。

頭をよくするはずのDHAは、実は我々の体にとって大変危険な活性酸素の発生源なのである。生物の体はある特定の物質の集合体で、その物質の分子の大部分は遺伝子DNAによってつくられるが、脳細胞にだけ働く特別なものなどは存在しないのである。

脳を神秘のベールに包まれた特別なものと考えることは、脳の機能を高めるチャンスを自ら放棄するのと同じことである。体のさまざまな器官の一部として脳を捉えれば、その必要としている栄養が他の部分と変わらないことに誰もが気づくだろう。

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 2) 頭の良さは後天的

慶応大学医学部大脳生理学の木々高太郎教授は「良い頭も悪い頭も生まれつきではなく後天的に作られるものだ」とおっしゃっている。良い頭とは、記憶力が良く、判断力も高く、理解力に優れ、頭の切り替えがうまく、機転が早いとしている。

頭の良さが後天的なものであることは、言語について考えてみればわかる。言語というものは、どこの国のものにしてもなかなか複雑だ。外国語の辞書を見ればわかるとおり、ボキャブラリーというものはそれぞれに豊富だ。

だから外国語の学習は、良い頭でなければ困難と言ってよいだろう。ところが周りを見回してみると、日本語を巧みに操ることができない日本人はまず見当たらない。すべての人間は大した違いのない頭をもって生まれてきたことの証拠である。

人間の頭の基本性能に大した違いがなく、良い頭というものが後天的に作られるものであれば、その機能を高めるにはどうすればよいだろうか。何か足りないものがあるのだろうかと考えるのが生活の知恵である。三石巌の分子栄養学では栄養という答えが出る。

野菜サラダを食べることが推奨されている。野菜からビタミンを接種すべきと云う発想である。厚生労働省が2005年に発表したビタミンCの推奨量は12歳以上の全年齢で100mgとされる。皮をむいたレモンを1日に40個食べなければならない。

これが無理ということは誰でもわかる。無理なら合成品で行くしかない。これが科学的な考え方、態度というものである。ビタミンCは、天然品でも合成品でも全く同じ物質である事を記憶してほしい。ビタミンCはアスコルビン酸で、クエン酸ではない。

同じビタミンという名前でも、AとEなどの脂溶性ビタミンは、天然品に限ると言っていい。天然品と合成品では分子構造が同じでないからである。脂溶性の者は1日分を1回にまとめても良いが、水溶性のものは1日の量を2~3回に分けて摂った方が良い。

ミネラルになると、原則としてビタミンのような個体差はなく、不足を恐れるのみである。ミネラルは必要量の比が知られているものもあるが、万人に共通する摂取量がない。大抵のものは思い出した時にココアとか黒砂糖とかに手を出せば間に合うだろう。

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 3) 脳の進化

脳は神経細胞ニューロンの集まりであるが、ニューロンの原型はイソギンチャクのような腔腸動物に見られる。腔腸動物のような下等動物の神経系が進化して、われわれの持っている高級な脳となったのである。

ヒトは、不幸にして植物状態になることがあるが、それでも心臓や肺が動く。高騰な脳は動いていないが、低級な脳は働いているからである。ヒトの脳に重い障害があれば、腔腸動物の脳にまで逆戻りするということになる。能細胞は甦る

ヒトの脳はワニの脳とウマの脳とヒトの脳と、三つの脳の合体したものだと云った人がいる。神経細胞ニューロンは層状に並んでいるので、その集合体を皮質という。ワニの脳は主として、脳幹と旧皮質からできている。

ウマの脳では、脳幹と旧皮質に古皮質が加わっている。そして、人間の脳では、進化が進むにつれて新皮質が加わっている。人類を特徴づける大脳新皮質に対して、旧皮質と古皮質を合わせて大脳辺縁系と呼ぶ。

大脳辺縁系に属する旧皮質には生命脳という別名がついている。脳幹とここが働いていれば生命は維持されるが、いわゆる植物人間で生きることになる。つまり、動物の脳のうち脳幹と生命脳はどれよりも大切である。

古皮質には情動脳という別名がついている。これは感情をつかさどる脳である。これを持っているのは高等哺乳類ということとなる。イヌには情動脳があるから喜怒哀楽を感じ精神的ストレスが起きてもおかしくないという理屈になる。

旧皮質を生命脳といい、古皮質を情動脳と呼べば新皮質は知性脳となる。どの段階の脳も情報を保持し、それを伝達する器官という点では同じである。新皮質に比べ、大脳辺縁系は情報伝達に使われるエネルギ―の効率が格段に悪い。知性脳は省エネになっている。

人間は言語を持っていて、情報を言語化することができる。無数の情報を言語化して知性能に収納しておき、必要に応じてこれを操作し、または取り出す。これは人間でなければできない芸当である。

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 4) 活性酸素の恐怖

知性能の活動を十分に発揮させるためには、エネルギーを大量に使う情動脳の活動を野放しにしないことである。エネルギーの消費量は酸素の消費量に通じるもので、酸素が消費されるときはその最低2%は活性酸素となる。

活性酸素は生命を傷つける殺し屋である。生体を作っている分子、たとえばタンパク質の分子は数千万の原子の集合である。原子は原子核とそれを取り巻く決まった数の電子を持っている。原子核と原子核とを電子で結合させている。

活性酸素は生体の分子から電子を奪う作用がある。分子から電子を抜かれると分子の構造が壊れる。電子を抜かれたタンパク質は分子としての本来の働きができなくなってしまう。活性酸素が電子を奪うのはタンパク質だけではない。

タンパク質をつくるための設計図であるDNAもそのターゲットとなる。DNA分子が電子を引っこ抜かれれば、遺伝情報の暗号が狂う。これが発ガンにつながることは容易に理解できる。

生体に細菌やウイルスが入ってくると、白血球が活動してこれを殺してしまう。白血球の仲間の好中球、マクロファージなどは体内で活性酸素を作って、細菌やウイルスなどに活性酸素を吹きかける。病原微生物は死ぬが、付近の生体に障害を与え炎症を起こす。

人類が他の動物より寿命が長いのは、障害性のある活性酸素を除去する酵素システムが優れていることによる。しかし、このシステムは40歳を過ぎると急速に衰えるので、その時点から活性酸素対策を意識的に採用しなければならない。

活性酸素は生体内で休むことなく発生している。呼吸によって体内に入る酸素の少なくても3%が、エネルギ発生の際に活性化する。活性酸素はストレスがあるとき、細菌感染があるとき、添加物や汚染物質、医薬品などを解毒するときにも発生する。

活性酸素にはいくつもの種類がある。細胞内のエネルギー発生器官ミトコンドリアで生じる活性酸素は、スーパーオキサイド(SO)と呼ばれる。SOの酸化力、電子を引き抜く力は中程度である。ミトコンドリはこのSOを除去するためにSODを用意している。

SDOはスーパーオキサイド除去酵素と言い、酵素が働くとSOが除去される代わりに過酸化水素水が発生する。困ったことに過酸化水素水は電子を引き抜く力があり、寿命が長く体内をうろつき回ることができる。これが非常に恐ろしい。

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 5) 活性酸素を除去する食品

体内で過酸化水素水が銅イオンや鉄イオンにぶつかると、最強の活性酸素ヒドロキシルラジカルに変身する。過酸化水素水を除去するのもやはり、カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼというセレン酵素である。

酵素は、ネギ類やごま、いわし、マグロなどの魚肉、たらこ、すじこ、ウニ、ココアなどに含まれている。ビタミンCは、スーパーオキサイドや最強最悪のヒドロキシルラジカルをも防ぐことができる。

たしかにビタミンCは活性酸素を消してくれる。しかし、ビタミンCは活性酸素に似た強い酸化力があるので、1日に10mg以上を摂るのは注意したほうが良い。毎日2gなら問題はない。恐怖の活性酸素を除去する食品は次のとおりである。

スカベンジャー食品名
ビタミンC
(水溶性)
レモン、イチゴ、ミカン、柿、パセリ、トマト、
ブロッコリー、ピーマン、サツマイモ、番茶
ビタミンE
(脂溶性)
アーモンド、コムギ胚芽、大豆、落花生、ウナギ、
シジミ、カツオ、アユ
カロチノイド
(脂溶性)
緑黄色野菜(人参、南瓜、トマトなど)、柑橘類、
抹茶、赤身の魚、海藻、卵黄、魚卵(タラコ、スジコ、
ウニなど)
ポリフェノール
(脂溶性)
ゴマ、緑茶、赤ワイン、コーヒー、ショウガ、
香辛料、ハーブ

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2 脳を働かせるには

 1) 大切な朝食

自治医科大学の出身者で医師の国家試験を受けた受験者を調べたところ、不合格だった者はきまって朝食抜きの習慣の持ち主だった。自治医科大学は全寮制であるため、この事実が分かってから朝食を重要視すると、合格者は群を抜いてよくなったそうだ。

食事をすれば体温が上がる。そのピークは約1時間後に来て約3時間後に元へ戻る。結局、食事をとって1時間後に試験会場に入るのが、ベストコンディションということになる。朝食抜きに気づいたのは素晴らしいことである。

食物が口に入れば咀嚼が始まる。そこでは神経伝達もあり、筋肉収縮も起きる。そして消化酵素の生産もあり、分泌もある。胃に筋肉活動や数種類の消化酵素の生産と分泌が始まる。これらの物理的・化学的変化でエネルギーが消費されていく。

食物の特異動的変化と呼ばれる体温変化は、それに並行する形で脳の温度変化を引き起こす。その結果、知的作業能力も変化する。知的作業能力の向上は、医師の国家試験という難関突破に関するほど大きなものだった。

代謝は酵素と呼ばれるたんぱく質の媒介によって、体温のような低い温度で化学反応を実現する現象である。低い温度と言っても、この酵素反応の進行速度は温度によって異なり、それぞれに指摘温度が存在する。

試験となれば、学生の脳はフル回転を強要される。脳の温度は酵素の指摘温度であると代謝の進行速度は最高になる。朝食抜きの脳の温度はそれよりは低いはずである。朝食を摂っているなら、試験の始まる1時間前だとコンディションは最高ということになる。

試験の場でものを言うのは脳の出力である。しかも、試験で要求されるのは集中力である。集中とは、脳の特定の部分を興奮させ、ほかの全ての部分を抑制することである。興奮でも抑制でもエネルギーが消費される。

エネルギーが消費されると体温が上がる。褐色脂肪細胞のミトコンドリアは他の細胞のものと違って、ブドウ糖や脂肪酸などのエネルギー源を受け取ると、それをそっくり熱エネルギーに変えてしまう。大人の褐色脂肪細胞は内臓と肩甲骨の間に残されている。

体温を上げてやれば頭が良くなるだろうか。勉強するというのはエンジンを高性能大排気量にすることだ。元が軽自動車並みにエンジンではいくら出力を上げても限界がある。体温上昇によって頭がよくなるというのも限界があるのだ。

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 2) 頭の良し悪しは母親しだい

脳の出力は母親ゆずりのものであって、父親との遺伝的関係はゼロである。脳の出力も筋肉の出力や心臓や肝臓や胃の出力はすべて母親ゆずりだが出力配分はデタラメで、デタラメという言葉の代わりにランダムと云えば体裁がいいかもしれない。

人体はその最盛期(20歳ころ)に60兆個の細胞を持つと言われるが、元をさぐれば出発点はたった1個の受精卵という細胞である。これが分裂を繰り返して増殖するのがここにデリケートな問題が存在する。

人に限らず生物は父と母から受け継いだDNA、つまり遺伝子の暗号情報によって作られるのだが、例外的な存在がある。それは、細胞の中にあるミトコンドリアである。細胞の発電所であるミトコンドリアは、生体の中で使われるエネルギーを作る器官である。

遺伝というのは、父親と母親の遺伝情報が掛け合わされて子どもに渡される。ミトコンドリアは筋肉細胞の中にも脳細胞の中にもあり、すべて母親からゆずられたものである。精子のミトコンドリアは精子本体ではなく、その尻尾の付け根に納まっているからだ。

父親のミトコンドリアは受精のときに精子が泳ぐエネルギーを作るのが役目で、受精してしまえば尻尾ごと切り離されてしまう。したがって受精卵の中には、母親のミトコンドリアしか存在しないことになる。医学常識はウソだらけ実戦対策編

筋肉の出力が人並み以上の人もあり、脳の出力が人並み以上の人もあるが、どこの出力が大きいかは母親ゆずりではなくデタラメである。しかし恐れることはない。フランスの老化研究所の調査で新皮質の神経細胞の利用率は20%に過ぎないという。

では、何のために80%が眠っているのだろうか。そのカギはミトコンドリアの効率である。人間はよほどの気質的、機能的障がいがない限り、誰もが同じように話せる。脳の神経細胞である神経細胞の出力にバラツキがあっても、言語能力に違いが出ない。

これは脳全体のパワーに遊びがあるからだ。余裕といってもいいだろう。それが80%が眠っているという意味である。仮に低出力の神経細胞が80%あっても大丈夫ということになり、これが老化研究所のデータの意味するところである。

要するに、飛びぬけて抜けて出力の大きい脳の持ち主はいないと考えるのが正しい。頭の良し悪しがあるとすれば、栄養条件に還元することが可能である。そこに脳の血液循環の条件が加わるだけである。人間のDNAは超能力を許さないのである。

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 3) 記憶力を高める

どんな人でも毎日何かを記憶し、その記憶の籠の中からいくつかを呼び出して生きている。全ての人の前を、新聞やテレビや他人からの情報が通り過ぎていく。その人が意識していなくても、そのいくつかが選択されて記憶のプロセスに入る。

選択の基準は興味ということになり、情報の選択基準は利害関係にあるとしたほうが正解だろう。興味はその人に固有のものであり、特定の職業を持つ人ではその職業に偏る傾向がある。知っているかどうかで収入や立場が変わるのだから、利害関係が絡んでいる。

好奇心であれ利害関係であれ、興味の内容ごとに記憶に動員される神経細胞は脳内にある領域に限定され、その神経細胞は活性化されている。活性化されているといることは、若干の出力が用意されているということにほかならないだろう。

記憶はエネルギーを消費する行為である。神経細胞が活性化されずに出力が小さいままでは記憶することはむずかしい。ある領域に特別な興味を持つ人は、自分の興味のあることを貪欲に捉えようとするだろう。その領域の神経細胞が活性化されている。

人の名前は情報単位である。人の名前は覚えにくくもあり、忘れやすくもある。これ人の名前と姿形との間に緊張関係がないからである。だから、人の名前を覚えられなくなっても、それはボケの証拠とはなりにくい。

神経伝達物質が出力側から入力側に渡されると、神経伝達の方向と逆方向に神経栄養因子と名付けられたタンパク質が移行する。神経細部は樹状突起を作り、軸策を伸ばしたり分岐させたりしてシナプスを形成する。神経栄養因子はそれらの作業を助ける。

オタマジュクの尾はある時期が来れば消滅する。この現象を枯死(アポトーシス)という。同様に、使われない神経細胞は枯死するようだ。細胞の構成成分もDNA分子も粉々にちぎれ、マクロファ-に食べられて後に何も残らない。

DHAは脳にも目にも必要な物質というが、人間は体内でDHAをEPA(エイコサペンタエン酸)という物質からつくっている。DHAをEPAも不飽和脂肪酸で過酸化脂肪資質になりやすく、活性酸素を発生する危険物である。危険度はDHAの方が高い。

海のない地方の人々の暮らしを考えると、だれもがDHA不足による脳の機能障害に悩んでいるだろうか。このことひとつを考えても、DHAを摂ったら頭が良くなるという神話のいかがわしさが分かるだろう。

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 4) 脳の老化はエネルギー不足

実存哲学ではものの存在様式を、対自存在、対他存在、即自存在の三つに分ける。対自存在とは自己を対象化する存在と言っていいだろう。自己を対象化するとは、自己の外に出て自己を見ることである。そういう離れ業は人間でなければできない。

それでは自己の外に立つものは何者か、自己そのものでなければならない。だが、自己の体の外に具体的な自己があるはずはない。自己の外に立つものが、自己の分身であればいい。そこで、その分身を探せば、自己の脳ということにならざるを得ない。

脳細胞というものは、原理的には自由自在の相互関係を作ることができる。脳は二つに分かれて、相手を批判することも、同意することもできる。脳の特徴はいくつかに分けて独立に機能することができる点にある。

脳は十分な栄養なしに十分な働きをするわけがない。だが、歳と共にエネルギーを供給するのは負担なるから、できるだけなまけようとする。つまり、記憶するのはおっくうだからそれを止めようとする。

すこし老いてくると「この頃は物忘れがひどい」などとこぼす人が多い。これは記憶をちゃんとしないために忘れたという場合が多く、覚えもしないで忘れたとはよく言えたものである。記憶にはエネルギーがいる。エネルギーの供給を惜しんでは困る。

人間の体は合目的性を持っている。脳が例外であるはずがない。筋肉が鍛えられるように脳も鍛えられる。負荷を増やしていけば出力は増す。生体はどんなに精密な機械よりも優秀である。合目的性と呼ばれる高度な性格が備わっているからだ。

野菜の成分は90%以上が水である。他にビタミンなどが含まれていても、決して多いものではない。野菜には食物繊維が多く腸内細菌の餌になるという。セルロースはウェルシュ菌など有害菌の餌になるが、有用菌は他に栄養物があれば見向きもしない。

野菜よりも、蜂蜜などに含まれているフラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖と摂る方が良い。合成品もあり、人間にとっても有害菌にとってもノンカロトリーである。野菜でなければ摂りにくいビタミンに葉酸があるが、これはバナナに多いので一本食べれば良い。

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3 記憶力の鍛え方

 1) 記憶の法則を覚える

昔から言われる頭の回転が悪いことのたとえで「あいつは血のめぐりが悪い」という表現は、実際に脳で起こっていることである。十分な酸素を摂取できない脳細胞は死滅する運命にある。歳を取ると海馬は酸素不足に陥っていき、機能低下を引き起こす。

目や耳から入った情報は大脳皮質で処理されて海馬に入り、海馬の先端の感情をコントロールする扁桃核との共同作業を経て脳弓という神経線維の束を通って乳頭体へ入る。その後、視床前核と帯状回を経て再び海馬へ戻る。これをパペッツの回路と呼ぶ。

長期記憶は鮮明なまま脳内に刻み込まれているのでいつでも取り出せる。一方、「短期記憶は昨日の事なのにすぐ忘れてしまう。短期の記憶容量は、単語で5~9個であることが知られている。記憶の出し入れを頻繁に行う習慣をつけると、度忘れを防止できる。

道路の信号機の右端の色は何色かと聞かれて、いつも見ているのに覚えていない。右脳を活性化させて画像を取り込み、理屈を左脳によって補強して記憶にダメを押す。車を運転する人に見えやすいように、車道の中央付近に赤があると理屈を考える。

シカゴ大学のサーストン教授が「知恵の七要素」を提唱した。「知覚の鋭さ(暑さ、寒さ、大小などの大きさを知る能力など)、空間認識(遠近、高低、広さの認識)、言語、数字、記憶力、論理的思考、おしゃべりの流暢さ」。これが記憶力を高めるカギという。

そして記憶術の著作を多数執筆している椋木修三氏は、自分の頭の中で整然と記憶できるように、整理の仕方を「番号を振る、図や表にしてまとめる、色で分ける、身近な物に置き換える、要点をまとめる、簡略化する」ことがコツと説明されている。

メモを取ることは重要と言われる。成功者の共通点を調査Dしたデータによると、成功者はメモ魔だったことが判明している。メモ用紙や手のひらにメモをする習慣をつけ、メモをするときに2~3回繰り返し読み返している。これが忘れにくくしている。

昨日はどのような洋服を着て外出したか、先週の日曜日の夕食に何を食べたか記憶にはないだろう。人間の脳は記憶する必要のないことを忘れるようにできている。10万円貸したことは忘れなくても、100円貸したことは忘れてしまう。

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 2) 記憶増進要素の活用

記憶は電池の放電のようにどんどん保持量が低下していく。だから、途中で何回も思い出すことで充電してやればよい。覚えて1時間後に記憶できているかしっかりチェックする。そして6~12時間後にもう一度おさらいし、24時間後にダメ押しをする。

記憶をしっかり保持するためには、時間の要素を無視するわけにはいかない。短期記憶を20秒以上思い浮かべ続けることができれば、長期記憶として残存する確率が高くなる。逆に言えば、20秒以内の記憶は不安定であることが証明されている。

睡眠前の1時間の使い方が記憶力を高めるためには不可欠である。そして、記憶した直後に睡眠をとったときのほうが、明らかに忘れる確率が低下しているという実験結果がある。目覚めていれば新たな刺激によって記憶は消しマンガでわかる記憶力の鍛え方去られる運命にある事が分かる。

興味を持ってそのテーマを楽しめば、自然に記憶力はついてくる。楽しく学習したり、興味を持ってマスターしようとするだけで、脳はフル回転して学習効果は間違いなく高まる。それを証明するデータはいくつもある。

人間は無意識に嫌なことは忘れて、楽しいことを記憶しておこうという力が働く。これをうまく記憶に利用して楽しみながら記憶する工夫こらす。例えば、お気に入りのBGMを流しながらもお勧めである。そして、記憶できた自分を褒めてやることも大切である。

興味こそ記憶を向上させてど忘れを防止する原動力である。動機の強さと記憶の強さに関連性があることは間違いない。記憶力を高めたければ、そのことに興味や動機を持つべきである。それだけで、記憶力は全然違ったものになる。

連想は記憶を引き出す大きな武器となる。記憶がよみがえるのは、そのほとんどが芋づる式にわきでてくる連想メカニズムによって起こる。連想に敏感になっておけば苦労することなく記憶を再生できる。連想が記憶の輪をどんどん広げて脳の活性化に寄与できる。

日常生活の一場面でも、人間は覚えようとする情報と覚えなくても良い情報を、無意識に選別している。興味のない情報は忘れやすく、興味を持てば記憶できる。必要な短期記憶は長期記憶に移行させ、忘れても良い短期記憶はその場で忘れてしまう。

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 3) 記憶力増進テクニック

通勤電車の車窓を高速で通り過ぎるさまざまな広告塔屋、立て看板の情報を読み取っていけば、パターンの瞬間記憶能力が驚くほど増進するだけでなく、あなたの脳の活性度がどんどん高まっていく。

円周率を数万桁記憶している記憶の達人は、イメージストーリー記憶法と呼ばれる記憶法をとっている。彼等はすべての数字をイメージに変換して、それを物語化して記憶させていくのである。イメージストーリー記憶法はあなたに偉大な才能を与えてくれる。

名を成し功を遂げた人の多くは、名前を覚える天才と言われる。本題に入る前に、名刺と顔を見比べながらいくつか質問する。少なくとも3回は名詞と顔を往復させて話しかけてみる。これだけで、相手の名前を確実に覚えることができる。

面談が終わったら、こっそり名刺を取り出してもう一度名前を確認しながら、顔を思い浮かべてみる。顔の特徴や印象に残ったことを名刺にメモしておく。たったこれだけのことで、次回にあったときに度忘れする確率はグンと低くなる。

週末に、会った人の名刺を取り出して名刺を整理する習慣をつける。1枚ずつ取り出して、十分に時間をかけながら会ったときの様子を思い出しながら名刺を整理をする。メモを読み直すことで、名刺のやり取りをしなかった人まで思い出すと長期保存となる。

右脳には顔を覚える顔細胞がある。雑踏で美人とすれ違ったら、ちょっと立ち止まってその顔をもう一度思い浮かべる。顔細胞を刺激してこの部分の活性化をすれば、顔を記憶することは自然に得意になる。但し、デート中は止めたほうが良い。

短期記憶は思考が介在して数秒から数日間認識しているが、とっさの判断という超短期記憶はせいぜい2~3秒で思考は介在しない。日頃から感覚器官を鍛えておくことが、超短期記憶を洗練させてスムーズな動作を実現してくれる。

また、視覚以外の感覚器官を総動員して記憶すれば、それだけ記憶は強烈となる。英単語のlemonを記憶するとき、レモンの表面の感触や色、香りや味もいっしょに動員させてイメージすると、その記憶は鮮明なものとなる。

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 4) 超記憶テクニック

  ① 部屋記憶法

住み慣れたあなたの自宅を思い浮かべると、玄関から入ると間取りごとに常設されている品物やインテリアはしっかり記憶されている。思いつくままに自宅の事物を挙げると、20や30はすぐに出てくる。

家の中にあるものを順序立てて確認しながらメモしていく。部屋記憶法は、これらのキーワードに記憶したい事柄を結び付けて記憶していく方法である。記憶するときには、荒唐無稽なストーリーを考えると忘れる確率が低くなる。例を挙げてみると、

玄関には、扉、花瓶、靴箱、傘立て、絵画、スリッパ。居間には、カーテン、テーブル、テレビ、本棚、ソフアー、暖房器、電話、観葉植物。寝室には、洋服ダンス、和箪笥、ベット、布団、目覚まし時計、カーテン。

台所には、流し、ガスコンロ、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、食器棚。水回りには、洗面台、ドライヤー、歯ブラシ、髭剃り、整髪料、鏡、浴槽、シャワー、シャンプー、石鹸、タオル、便器、トイレットペーパー。

たとえば、スーパーマケットで、ダイコン、サンマ、ヨーグルト、チンゲン菜、赤ワイン、アスパラガス、豆腐、しょうゆ、食パン、イチゴの10品目を買物すると考え、水回りの事柄にこじ付けていくと次のようになる。

洗面台でダイコンが泳いでいる、ドライヤーがサンマを焼いている、歯ブラシにヨーグルトが載っている、髭剃りの柄がチンゲン菜でできている、整髪料に赤ワインが入っている、鏡からアスパラガスが生えている、浴槽で豆腐が泳いでいる、シャワーからしょうゆが流れ出ている、シャンプーに食パンが載っている、石鹸にイチゴが埋まっている。

親しみやすい自分の家にあるものと結びついけて、ワーキングメモリーを鍛える。そうすればあなたは簡単に記憶術の達人になれると、鹿島体育大学の児玉光雄教授が述べている。眉唾ものと疑う前にやってみるとこである。

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  ② 身体記憶トレーニング

身体記憶トレーニングは、頭頂から左右の身体の部位ごとに1~30までの番号を付け間違えないようにその部位を意識しながら番号順に記憶する。そのうえで記憶したい事柄をその部位に結び付けて、イメージを描きながら記憶していく方法である

番号10
部位頭頂右眉左眉 鼻 口 顎右耳左耳右肩左肩
番号 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
部位右腕左腕右手左手右指左指右胸左胸右腰左腰
番号 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
部位右腿左腿右膝左膝右脛左脛右踝左踝右足左足

例:1,宝石、2,みかん、3,腕時計、4,鉛筆、5,爪切り、6,国会議事堂、7,ハサミ、8,東京タワー、10,携帯電話、11,アイスクリーム、12,白ワイン、13,ビアグラス、14,ボート、15,レモン、16、財布、17,吊り橋、18,積み木、19,マンガ、20,ひまわり、21,入道雲、22,洗車、23,栗、24,乾電池、25,ホウレンソウ、26,パソコン、27,口紅、28,美容院、29、三味線、30、アイスクリーム。

これらの事柄を1つずつその番号に当たる身体の部位をイメージとして描いていく。最初はなかなか鮮明なイメージが描けないかもしれない。しかし、この記憶法を粘りつよく積み重ねるうちに、あなたの強味方になっててくれる。

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  ③ 数字返還記憶法

記憶法の中でも伝統的に使われているテクニックが「数字返還記憶法」である。特に記憶の達人は、このテクニックを自由自在に駆使して、驚くべき速度で記憶していくことができる。実際の記憶に大きく貢献し、脳の活性化トレーニングにもなる。

数字返還記憶法には「機能分類法」と「五十音分類法」の二種類があるが、ここでは比較的なじみ易い五十音分類を紹介する。たとえば、取引先の吉田物産の電話番号が275-1723であれば、「きみにおまかせ吉田物産」と記憶すればよいことになる。

意味のない言葉でも、おまじないのように繰り返して唱えれば簡単に暗記できるようになる。変換表を手帳に書き留め、手がすくたびに記憶したい数字を適切な文字に変換する作業を続けると、誰もが驚く数字記憶の達人になれる。

   〇 数字 ⇒ 文字変換表(五十音分類)

 あ い う え お
 か き く け こ(濁音含む)
 さ し す せ そ(濁音含む)
 た ち つ て と(濁音含む)
 な に ぬ ね の
 は ひ ふ へ ほ(濁音含む)
 ま み む め も
 や   ゆ   よ
 ら り る れ ろ
わ        ん

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  ④ 一万項目記憶法

一万項目記憶法は、番号に割り当てたキーカラーと9種類のキーワードを記憶するだけで1万項目の事柄を順序立てて記憶することができる。まず、9種類のキーカラ―を暗記する。次に、9種類のキーワードを記憶する。これだけである。

48番目に「ニンジン」を記憶する場合、最上位の位の数字は4で、1の位は8。つまり、青と山を人参に結び付けて記憶すれば良い。例えば、超巨大ニンジンがたくさん生えた山と青空を思い浮かべると、この映像から48番目は「ニンジン」と記憶できる。

856番目に「乾電池」を記憶することにした。最上位の岩から手がたくさんでていて、それぞれの手に乾電池がたくさん握られている。このイメージを記憶しておけば、856番目は乾電池であることを即座に導きだせる。

999項目目の事柄が「飛行機」だとしたら、まずキーワードは「金色(千の位)」、「九官鳥(100の位)」、「救急車(10の位)」、「滝(1の位)」となる。救急車の上にたくさんの九官鳥が止まっていて、それが滝に不時着した飛行機に横付けされ、患者が運ばれていくシーンをイメージする。

この記憶法のカギは、強烈なあり得ないイメージを描くことにつきる。数や大きさを活用してあり得ないイメージを描くことで印象度が増し、その事柄をしっかり記憶できるようになる。

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   表1 最上位の色

番号

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   表2 1位のキーワード

番号キーワード
 0空(そら「空」を無、すなわち〇と読む)
 1川(川野流れを1の数字に見立てる)
 2月(つき:「つ」をTWOと読む)
 3太陽(AUN:サンと読む)
 4星(ほし:「し」を4と読む)
 5砂漠(ゴビ砂漠の「ゴ」から5を連想する)
 6岩(英語で「ROCK」を6と読む)
 7海(「波」を連想し「な」から7を連想)
 8山(やまの「や」やその形から8を連想)
 9滝(急流:「急」を9と読む)

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   表3 10位のキーワード

番号キーワード
 0輪投げの輪(形から〇を連想)
 1煙突(その形から煙突を連想)
 2自転車(二輪から2を連想)
 3鏡(三面鏡から3を連想)
 4テーブル(脚が4本から4を連想)
 5手(5本の指から5を連想)
 6サイコロ(立方体の6つの面から6を連想)
 7タバコ(「セブンスター」から7を連想)
 8手拭い(「はちまき」から8を連想する)
 9救急車(「救急」から9を連想)

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   表4 100位のキーワード

番号キーワード
 0クラゲ(形からち〇を連想)
 1ウナギ(形から1を連想)
 2月チンパンジー(二足歩行から2を連想)
 3ミツバシ(「ミツ」から3を連想)
 4牛(脚が4本から4を連想)
 5ヒトデ(5本の足から5を連想)
 6トンボ(6本の足から6を連想)
 7七面鳥(名前からから7を連想)
 8タコ(8本足から8を連想)
 9九官鳥(名前からを9を連想)

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 5) 記憶の奇跡を起こす

  ① 瞬間記憶トレーニング

記憶力を増進させるには、集中力を利用して瞬間記憶力を高めることである。脳は時間的余裕があるとすぐさぼってしまう。とにかく徹底して知覚時間を制限すると、自然に脳は活性化する。最も手っ取り早いのが「瞬間記憶トレーニング」である。

速読を実践することで記憶力が増進するだけでなく、脳も活性化される効果が期待できる。普段から速読を心掛けると、集中力が高まって高速に情報処理をしてくれる。完璧に記憶するという姿勢をいったん葬り去り、高速で記憶させる習慣を身に着ける。

脳という臓器は、あなたが欲しい情報を選別して瞬時に見つけてくれる、驚くべき検索能力を有している。脳の持つ高速処理機能を活用したければ、新聞や雑誌、あるいはパソコン上のインターネット情報を高速で読み取る習慣をつければよい。

もちろん、本は最初のページから読み進む必要はない。脳の検索機能を活用して興味ある情報だけに脳に見つけさせればよい。そういう習慣をふだんから意識的に身に着けることにより、あなたは情報の高速処理が身につく。

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  ② スキャン読書法

読みたい本に向かい、その本を読み終えるために要する時間をあらかじめ設定する。読む前のその本の難易度や重要度をしっかり把握したうえで、読み切る時間を宣言する習慣も、雑誌や読書の情報処理時間を短縮してくれる。

本に向かったら、自分にとって重要な部分とそうでない部分を瞬時に見分けることに意識を払いながら読み進める。不要なページはわずか2~3秒でザーッとページ全体を把握し、すみやかに次のページへ異動する。文庫本1冊なら30分が適当だろう。

この読書法により、単位時間当たりの記憶量も自然に増大していく。その本を読み始める前に、その情報にかける情報処理時間を決定してから読み進める習慣が、あなたの情報処と記憶力の達人に仕立ててくれるのである。

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  ③ 新聞記憶トレーニング

用意するものは、その日の朝刊と赤の細書きサインペンとメモ用紙だけ。まず、朝刊の一面をザットと見渡して、目に飛び込んでくる自分が興味を抱いた言葉を赤のサインペンでマークしていく。そして、同時にこの言葉を集中して記憶する。

もしも記憶できない目新しい言葉があれば、すぐにメモ用紙にメモを取る。この要領で1ページ目から最終のページまで、新聞紙全体に視野をめまぐるしく張りめぐらせて、自分が興味を抱いた言葉を探しながら同時に記憶していく。

このトレーニングは記憶力を増大させてくれるだけでなく、新聞紙一面に視野を張り巡らせて、情報を瞬時に読み取る高速情報処理能力を驚くほど高めてくれる。

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  ④ 休息の取り方が重要

仕事においても長時間労働になれば、おのずからその能率は低下する。アメリカのホールズ氏は休憩をうまくとるテクニックを身につけるだけで、仕事の能率が飛躍的に向上することを実際の現場のデータにより証明した。

彼の実験結果は、1日のうちに同じ1時間の休憩をとる場合でも、1日に2回に分けて30分ずつ取るより10分ずつ6回に分けて取る方が、2時間ごとに10分休憩を取るよりも1時間ごとに5分休憩を取るほうが、仕事の能率が高まるというものだった。

これはスポーツでも同じことが言える。テニスを週末にまとめて4時間練習するより、1週間を4回に分けて1時間ずつ練習するほうが上達は加速される。これまで見落とされていたが、休息こそが学習に寄与する大切な要素である。

デジタルカメラが出る前のカメラはフイルムを使っていた。撮影したフイルムを現像したままにしておくと、時間の経過とともに画像は消えてしまう。現像を停止させる液に浸してから定着液に浸すことで、初めて安定した画像となる。

記憶も全く同じで、記憶を定着されるためには休息が必要である。真っ赤に溶けた鉄を鋳型に注ぐのと同じように、冷却期間を置かなければ記憶は定着しない。休息は記憶の正確さや能率に貢献してくれる。

記憶するときに同じ2時間かけたとしても、2時間ぶっ通しで記憶するよりも、30分ごとに10分休憩を入れるほうが、間違いなく記憶の正確さや能率に貢献してくれることを理解してほしい。

記銘→休憩→保持→休息→記銘→休息・・・というサイクルがあって、初めて安定した記憶を獲得できる。だから、テストの前の一夜漬けの勉強はたんなる一時しのぎであって決して血となり肉となることはない。

朝の通勤電車の中で英単語や資格試験の教科書を勉強するとき、記憶したい事柄を記憶したあと外の景色にしばし目を移して休息時間を確保する。あせらず、ゆったりとした気持をもって、休息をはさみながら記憶することが驚くほど学習効果を高めてくれる。

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6 あなたは何しに生まれた

 1) ありふれた疑問

あなたは何しに生まれてきたのかというのはありふれた疑問で、むかしから哲学の対象になったテーマである。だが、あなただけの問題ではない。私の問題でもあり、犬の問題でもあり、ピロリ菌の問題でもある。例外は、多分エイズウイルスのような連中だろう。

40億年前の地球は地獄の風景を思わせる。間断なく稲妻が光り、暴風雨の荒れ狂う場であった。地表はゴツゴツの岩ばかりで、いたるところに火山が噴き上がっていた。そして、海は存在した。これが生命誕生の場になるとはだれも思えない。

地球にあった分子同士は、火山の熱エネルギーや稲妻の電気エネルギーの直撃を受けて離合集散を繰り返していた。いくつかの分子が結合して新しい化学物質をつくったり、それが分解して新しい物質となったり、無限の化学反応を展開した。

この偶然が何億年と続き、種々様々な化学物質を生んだ。その中にアミノ酸があり、核酸素子があった。それらがデタラメな運動をやっているうちに、いつのまにか生物ができあがったと考えないわけにはいかない。そこに神などの出番はない。

いま、地球上の全生物はそれぞれに自己の生命を守り、そして子孫を作っている。これはどの場面をとっても必然に思えるが、それは全くの偶然から出たまこと(真)なのだ。

生物体をつくる物質として必須のものは、タンパク質と核酸である。これは高分子といわれるもので、同じ様な単位物質の分子が鎖のようにつながった巨大な分子である。タンパク質の場合、単位物質はアミノ酸という名の酸であって、その種類は20ある。

核酸の場合は、核酸素子という名の化学物質が単位で種類は8つある。それはさらにDNA型4種とRNA型4種に分類される。DNA型核酸素子は鎖のようにつながってDNAの高分子となり、RNA型核酸素子も鎖にのようにつながってRNAの高分子となる。

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生体の構造単位が細胞で、細胞を組み立てる物質はタンパク質や核酸だけではない。それ以外にも必要とされる物質がすべてそろったとき、細胞の原型ともいうべき構造物が出来上がったと考えてみよう。細胞の様な構造物は無限の生命を持っていない。

新しい構造物は解体して滅びざるを得ない。新しい存在である細胞はやがて死に、この細胞を生物とみなすことはできない。この細部が自分と同じものを造る能力を与えられれば、その細胞は増殖能力を獲得したことになる。生物の祖先の資格を持つことになる。

生物と呼ばれる物はどんなものであっても、ある長さの時間を生き続け、その時間の中で自分と同じものをつくることができる。それが生物というものの条件である。これを「個体の保存」と「種の保存」ということができる。医学常識はウソだらけ

生物という存在が、個体の保存と種の保存を運命づけられ、すべての生物は、生物としての義務として個体の保存と種の保存を生きる目的として押し付けられた。我が身を守るシステムを備え、生殖のための器官を持ち、これを活用している。

人間は、自分を守り、子孫をつくるために生まれてきたのであると言われて、その通りと引き下がる人はいないだろう。人間が他の生物と異なるのはこの点である。人間の一生を「起承転結」で考えてみよう。

「起」は成人するまでの時期、「承」は子を作り養育する時期、「転」は起承を顧みて人生のあたらな意義を発見してそれに残りの人生を捧げようとする時期、「結」は生の意義を失って死を待つ時期といえる。

人の一生が起承転結で表現できると、人の一生が他の生物と全く違う事を強調するのに適している。人の一生は、イヌやネコの一生とは区別される。イヌとネコには「起承転結」の「転」がない。それでこそ、万物の霊長という言葉が生きて来るのではないか。

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 2) 日本産のイチョウ

ドイツやフランスではボケの薬が医薬品になっている。これれは日本産イチョウの葉からとった特殊なフラボノイドである。毛細血管をひろげて循環をよくする作用と、側副血行路をひらく作用がある。

脳卒中を起こして治った人の脳の欠陥を造影してみると、前とは全然違っている。これは、側副血行路を使うようになったためだ。側副血行路をはもともとの血行路の他にあらかじめ用意されていて、普通は閉じている。

銀杏の緑葉フラボノイドには、これを開く働きがあった。このフラボノイドを与えてアルツハイマー型認知症が治った例もある。頭を使うために、まず脳の物質的物理的条件をベストに持って行くのがいいに決まっている。

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 3) 生きがいをもとう

人間以外の動物の寿命が、種の保存能力が失われたあとまで続くことはむしろ異例である。人間の場合、種の保存時期が終わると多くの人々は人生を振り返り、世の中をひろくながめようとする。そして、己の人生に意義を見つけようとする。

起承転結の人生のうち、転期こそは人間らしい生き方のできる時期である。生きがいとは他者への奉仕ということかもしれない。それによって己の生の満足が得られる。これが生きがいの実感となる。祈りも他者のために捧げられるものでなければならないだろう。

まず、自分にできることを探すことから始め、それを実行する。明日をも分からない病人にも何かできることがある。では、私に何ができるだろう。思いを文章にしてそれを伝えることができる。春になれば、環状線の花壇に花を育てることも生きがいである。

日本の大学は教養科目をけずり、大学生はアルバイトにのめりこんで勉強をしないことで世界に知られている。アメリカで医学部を志す者は、他の学部を出ていなければならない。我々日本人は体の価値には目を向けるが知の価値を知らなすぎる。

健康のしるしとして、日本では「快食、快眠、快便」を挙げる傾向がある。アメリカの医師は、健康について相談に来たひとに、まず「生きがいの有無」を尋ねるそうだ。ブタにとって必要なことより、人間にとって適切なことは歴然である。

私の生きがいはあなたの生きがいではない。生きがいはめいめいが探しもとめるべきものである。生きがいなしに生きる人間はブタと同じである。自分にできることを見つけよう。それは、必ず見つけることができるものである。

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参考図書:医学常識はウソだらけ実戦船対策編(三石巌、祥伝社車文庫)、脳細胞は甦る(三石巌、祥伝社車文庫)、長寿の秘密(三石巌、祥伝社車文庫)、マンガでわかる記憶力の鍛え方(児玉光男、ソフトバンク・クリエイテブ株式会社)