はげちゃんの世界

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第41章 今、心臓血管外科は…
         (セミナー

2019(平成31)年5月11日、道新ホールで開催された医療法人札幌ハートセンター主催の第12回ハートセミナーで札幌心臓血管クリニック道井洋吏院長の講演「今、心臓血管外科は…」の要約です。

1 心臓血管外科医は絶雌危惧種

今、心臓血管外科医は絶雌危惧種と言われています。絶雌危惧種と言われ理由は七つあります。

・ 次世代を担う若手の外科志望医が激減している。

・ カテーテル治療の進歩に伴い手術対象症例が減少している。

・ 簡単な基本的手術の経験がしづらくなっている。

・ 複雑かつ難易度の高い症例のみが施術対象になっている。

・ 基本的なことからきちんとできる施設が減っている。

・ カテーテル治療、内科治療の評価に耐えうる外科医が減っている。

・ 海外での経験は、中々日本では通用しない。

日本の手術は非常に緻密で丁寧ですが、海外での手術は数が多くアバウトです。このため、海外で学んでも日本では通用しませんし、日本では年間200例ほど心臓の手術をしていないと技術は保てないのです。

若手の先生方は国内でいかにいい経験を積むことができるかということが非常に厳しい状況ですが、札幌心臓血管クリニックは2017年に心臓胸部大血管手術数で北海道初の400件を超え、2018年には心臓胸部大血管累計2,000件に到達しました。

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2 心臓や大動脈の手術

虚血症心疾患(狭心症・心筋梗塞)の治療は、内科ではステント(カテーテル)治療、外科では冠動脈バイパス術を行います。内科ではステント(カテーテル)治療は簡単にできますが、再狭窄が起こる場合もあります。カテーテル困難症例もあります。冠動脈バイパス術では、その患者の血管で内胸動脈や胃大網動脈を使います。

札幌心臓血管クリニックでは、低侵襲バイパス手術(MIDCAB)とカテーテル治療(PCI)の良いところ取りをしたハイブリッド治療が行われています。これは非常にレベルが高くなければできない手術です。

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1) 心不全の原因

心不全は状態であって病名ではありません。心臓に器質的及びあるいは機能的異常が生じて急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し、心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への還流不全を来たし、それに基づく症状や徴候が急逝に出現、あるいは悪化した病態と定義されています。

心臓のポンプ機能の異常に伴う心室充満圧の上昇で心拍出量低下が存在します。それによって引き起こされる体の異常症状です。心不全は、急性心不全と慢性心不全、右心不全と左心不全、収縮不全と拡張不全、虚血性心不全と非虚血性心不全に分類されます。

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2) 心不全の原因

 ① 心筋不全

ア 一次性心筋不全  心筋症、心筋炎

イ 二次性心筋不全  虚血性心筋障害、二次性心筋症

 ② 機械的障害によるポンプ不全

ア 流出障害  房室弁狭窄、収縮性心膜症、頻脈

イ 駆出障害  高血圧、動脈弁狭窄、房室弁閉鎖不全、心室瘤、肥大型心筋症

 ③ 循環の不全

ア 循環血液量減少  出血、脱水

イ 末梢循環不全   貧血

 ④ 不整脈

ア 心室頻動    頻動性心房細動

イ 房室ブロック  洞不全症候群

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左心不全の症状が起こるメカニズムは、心臓(特に左心室)の力が低下すると血液拍出量が減少します。これにより各臓器への血液供給が減少するので、下肢の疲労・だるさ・血圧低下などが起こります。

左心室から血液が出ていかないため、その手前で血液のうっ血が起きます。ということは肺のうっ血状態が起きることになります。したがって、肺での酸素取り込み量が障害されるため、酸素不足で息切れや呼吸困難になります。

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3) 心不全の症状と微候

 ① 左室充満上昇

呼吸困難・起坐呼吸・発作性夜間呼吸困難・ラ音や喘鳴、X線の肺うっ血

 ② 右室充満上昇

頸動脈怒張・浮腫・腹水・肝腫大・胸水・消化器症状

 ③ 艇心拍出量昇

疲労・精神錯乱・皮膚冷感・末梢性チアノーゼ・夜尿・乏尿

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4) 心臓弁膜症の治療

心臓弁膜症と心不全の違いは、心臓の弁が傷んでいるのが心臓弁膜症です。

① 薬剤治療  心臓の負担を取る治療

② カテーテル治療  TAVI,MitaraClip

③ 外科治療(病気の根本治療)

 ・ 弁形成術(自己遍温存)

 ・ 人工弁置換術  機械弁(樹脂製)・生体弁(動物材料)

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5) 弁形成術(自己遍温存)

主に閉鎖不全症(弁の逆流)に対しては、僧帽弁ではほぼ100%治せます。大動脈では非常に難しく経験の豊富な施設でのみ可能で、自分自身の弁がきちんと動くように作り変えてやる方法です。

大動脈弁狭窄症は、特に高麗者に急増しています。僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術も増えていますし、大動脈弁閉鎖不全に対する弁形成術も増えています。

日本国内で65歳以上の大動脈弁狭窄の罹患率は2~3%と推定され、もっともよくみられる弁膜疾患です。米国では65歳以上の大動脈狭窄の罹患率は最大7%と推定されています。

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6) 大動脈弁狭窄症の症状

① 狭心症と間違うような症状  胸部のうずき、焼き付き、不快感、膨満感、疼痛、または締め付けられるような感覚を覚えます。腕部、背部、頚部、肩部、および咽頭部で感じられる場合もあります。

② 失神  突然かつ短時間の意識喪失。

③ 息切れ  歩行または横臥時に息切れや疲れを感じる。

④ めまい

⑤ 頻脈または不整脈

⑥ 動悸  早い、または不規則な心拍を自覚し、不安を感じている状態。

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7) 大動脈弁狭窄症は急速に進行する

大動脈弁狭窄症は軽微な症状が出てからもゆっくりですが、大きな症状症状発見後の2年生存率は50%です。軽微な症状が発現した時点で、速やかに重度大動脈弁狭窄に対する外科的処置を施行することが望ましい。

重度大動脈弁狭窄で、心不全の症状が出たら2年、失神の症状が出たら32年、狭心症の症状がでたら5年の生存率と言われます。

心エコーガイドライン 重度大動脈弁狭窄の評価におけるゴールドスタンダード

      指標 軽度 中程度 重症
最高血流速度(m/s)<3.03.0~4.0>4.0
平均圧較差(mmHg)<2525~40>40
弁口面積(cm2)>1.51.0~1.5<1.0
弁口面積指数(cm2/m2)非該当非該当<0.6

2008年ACC/AHAガイドラインによる重度大動脈弁狭窄の定義

 大動脈弁口面積<1.0cm2、平均圧較差>40mmHgまたは最高血流速度>4.0m/s

8) TAVI

TAVIは、内科と外科が共同で行う、きわめて低侵襲な大動脈弁の新たな治療手段です。これまでの手術が困難とされてきた患者にも朗報をもたしています。

大動脈弁置換術(AVR)に対するリスクが高い、または症状が重すぎる患者に対する新たな治療となり得ます。侵襲性が低く、人工心肺を使わずに大動脈便を生体弁で置換することができます。

しかし、手軽な操作で人工弁移植を行っている行っている反面、外科手術以上に危険なことを行っている要素も含んでいます。内科・外科ともに経験を持った施設で受けられることをお勧めします。

9) 僧帽弁形成術

僧帽弁閉鎖不全症は、左心室と左心房の間にある2枚の逆流防止弁(僧帽弁)が接合不良となり、左心室から左房へ血液が逆流する病気です。外科的手術が標準的治療でしたが開胸手術は身体への負担があり高齢者または他の持病等により困難な場合があります。

この治療法として小切開僧帽弁手術(MICS手術)が行われてきましたが、僧帽弁閉鎖不全症に対する新しい治療法として登場したのが、経皮的僧帽弁形成術(MitraClip)です。僧帽弁閉鎖不全症におけつ血液の逆流量をある程度減らし、心不全症状(息切れや浮腫など)を改善する効果が期待できると考えられています。

経皮的僧帽弁形成術は、欧州で2005年に1例目が行われ、欧州と米国で6万人以上に実施され、日本では2018年4月に保険償還され500人以上の方々に実施されました。

外科的弁形成術や弁置換術が高い、または不可能と判断された場合に適応されます。例を上げると、非常に高齢・心臓手術に既往があり・心臓の動きが悪い(ポンプの機能低下)・悪性腫瘍の合併がある・免疫不全の状態・脆弱(フレイル)などです。

上記の状態であってもクリップで僧帽弁を閉じると言う性質上、僧帽弁の解剖学的な形態により経皮的僧帽弁形成術による治療自体の治療自体が困難な患者もいます。最終的には全身状態の評価と共に、心臓超音波画像等で僧帽弁の評価を行い本治療が可能か否かをハートチームで総合判断しています。

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3 心臓外科のこれから

1) 低侵襲心臓手術

小さな傷で骨を切らずに肋骨の隙間から手術を行うことで、胸骨を温存するので胸骨正中切開が避けられます。

MICS手術の利点は、胸骨骨髄炎や縦隔胴炎(全手術の1~2%)の可能性がほぼなくなります。術中の胸骨骨折に伴う治癒までの運動制限がないことです。

MICS手術の欠点は、手術の難易度が高く、どこの施設でも可能な手術ではないことです。一般的には単純手術に限って適応となり、解剖学的理由等MICS手術不敵な症状も存在します。安全に治療を行うため、MICS手術不適応症例では無理をせず従来の胸骨正中切開を選択します。

適応のある症例では、胸骨を温存し、回復がより早く、合併症(創部感染)を減らし、より安全に、傷が小さく手術後の制限も少ないことが利点です。

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2) 心臓外科のテーマ

永遠なる治療手段の大きなテーマは次の三点です。

・ 低侵襲 ≠ 安全

・ 低侵襲 ≠ 最善

・ 低侵襲 ≠ 小切開

低侵襲治療を確実に行えるのは豊富な経験と熟練のスタッフが整った施設のみです。

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3) お問い合わせ

不安な方は、オンラインのセカンドオピニオン診療をお勧めします。セカンドオピニオンは有料のため、20分で10.800円です。さらに、質問が多い場合などは患者の合意のうえで20分ごとに5,400円が必要になります。

ハートセンテンターのホームページから、お問い合わせボタンを選択してメールで照会する方法もあります。

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