はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

  第34章 厚真町での支援活動

2019(令和元)年10月16日に札幌市社会福祉総合センターで開催の、社会福祉法人札幌市社会福祉協議会主催「災害ボランティアフォローアップ合同研修」で、厚真町社会福祉協議会の山野下誠主幹の講演「厚真町での支援活動」の要約に一部補足した。

1 災害の概要

 1-1 災害の発生

厚真町は北海道の南西部に位置し、南北に細長い稲作中心の農村地帯で、ハスカップの作付面積は日本一となっている。車で新千歳空港から約35分、札幌から約90分、フェリーターミナルもあり全ての交通アクセスに恵まれている。面積は401.15平方キロメートル、人口は2019年5月末現在2,147世帯4,564人である

2018(平成30)年9月6日午前3時7分、胆振地方東部でマグニチュード6.7、厚真町の最大震度7の揺れが10秒間続いた。震源の深さは37kmで、近隣の安平町とむかわ町は震度6を観測した

厚真町社会福祉協議会の山野下主幹は午前4時前に自宅を出て、厚真町社会福祉協議会事務所へ向かわれた。事務所へ到着すると停電で何も見えない状態で、内部は足の踏み場もない状態だったそうだ。

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北海道電力苫小牧火力発電所の1・2号機は老朽化で停止され、3号機は44歳で15万kwに抑制中、4号機は16歳でもフル稼働で設備の劣化速度を速めていたが、施設内設備損傷により復旧に長時間かかることを想定した訓練を一度も行っていなかった

原子力規制委員会の指示に従わずに原発再起動に拘り続けた結果、泊原発は地震で外部電源を喪失し非常用ディーゼル発電機6台を起動して燃料プール内の核燃料の冷却を維持している状態で、福島原発の教訓は生かされていないという驚くべき実態だった

この地震の影響で北海道電力の苫小牧火力発電所をはじめ他の火力発電所も停止し、北海道内は全戸停電(ブラックアウト)となった。下の写真は、この様子を伝える北海道新聞9月6日の朝刊である。

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 1-2 災害発生からの二週間

  1-2-1 9月6日

地震発生から8分後の3時15分に厚真町役場は災害対策本部を設置し、職員が施設利用者の安否を確認した。3時40分には全避難所の開設を指示するとともに町内全域の断水を確認した。

午前6時に北海道が陸上自衛隊本部方面隊に災害派遣を要請し、同本部方面隊は第七師団の派遣を決定した。北海道社会福祉協議会胆振地区事務所長が来所された。停電のため固定電話が使えず、職員の携帯電話を利用したが中々繋がらなかった

陸上自衛隊第七師団が支援に到着。行政・自治会町内会・民生委員・介護事業所による安否確認が行われ、透析患者移送は社会福祉協議会が、在宅酸素療法患者の支援は行政が担当した。避難所の運営は行政と自衛隊で対応し、町民の自主的活動が続いた

山野下主幹は9時から避難所を巡回して13時に職員と在宅利用者の安否を確認し、厚真町災害対策本部から情報収集をしながら道社協等への応援連絡をされた。15時30分に気象庁が地震発生時厚真町で震度7を記録したと発表した

北海道社会福祉協議会胆振地区事務所長が来所された。17時30分に気象庁が「平成30年胆振東部地震」と命名した

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  1-2-2 9月7日

被災された町内の方々が、取るものも取り敢えず避難所へ集まってこられた。被災住宅で倒れた家具は町内のボランティアが対応し、倒れたホームタンクは業者と自衛隊が状況を判断しながら対応した。

北海道社会福祉協議会職員、苫小牧市社会福祉協議会職員が来所され、災害ボランティアセンター開設に向けて打ち合わせを行う。15時30分に災害ボランティアセンターを福祉事務所内に開設し、活動拠点場所の選定作業を開始する。

高橋はるみ北海道知事が視察に見えられ、町内6ヶ所に避難所を開設すると、自主避難を含めて1,118人が避難した

15時30分に災害ボランティアセンターを社会福祉事務所内に開設し、活動拠点場所の選定作業を行う。ボランティアの受け入れは土曜日と日曜日は行わないことを確認し、マスコミなどを通じて周知した。

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  1-2-3 9月8日

災害ボランティアセンターの活動拠場所を調整し、本郷地区の旧かしわ保育園に決定した。

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  1-2-4 9月9日

事務機器・備品・活動資材などの災害資機材を整備して駐車所を整備した。2013(平成25)年十勝地方南部で発生したマグニチュード6.5の地震で使用した災害支援資機材を有効活用した。
 安倍晋三首相が視察に見えられた。

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  1-2-5 9月10日

災害資材整備、仮設トイレ搬入、社会福祉協議会事務所の光電話とインターネットが回復した。受付用電話を設置し、Facebook を開設してメール受付を開始することで、災害ボランティアは電話やメールで事前受付して募集人数を調整した

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  1-2-6 9月11日

災害ボランティアセンターが活動を開始した。最後の行方不明者が発見されたがその後死亡され、11日現在で死者は36人となった

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 1-3 初動対応など

12日から罹災証明書の交付申請の受付が開始され、正午のサイレンで犠牲者を悼み町民らが黙とうした。15日に厚真町役場前に犠牲者追悼の献花台が設置された。18日に町内小中学校4校と北海道厚真高等学校が後13日ぶりに授業を再開した。

18日から住家被害認定全戸調査が開始され、町内小中学校4校と北海道厚真高等学校が震災後13日ぶりに授業を再開した。

20日には、町と町議会、関係団体である農業委員会、土地改良区、町商工会、JAとまこまい広域、苫小牧広域森林組合、みなみ北海道農業共済組合いぶり支所、鵡川漁協厚真支所が議事堂で、北海道胆振創部地震議会と関連団体連絡会議を開催した。

この日の15時までに自主避難を含めて445人が七ヶ所の避難所に集まった。この地震の発生以降、厚真町では震度1以上の地震が300回以上記録され、震度5弱が2回、震度4が17回、平成31年2月21日午後9時22分には震度6弱の地震を体験した。

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  1-3-1 特に重宝した物など

行事用テント、仮設トイレ、2t平トラック、軽トラック、4tユニック、移動用10人乗りワゴン車、ニーズ調査用車両、パイロン、飲料水用20リットルポリタンク、コピー機、長テーブル、パイプ椅子、ホワイロボード、ヘルメット、保護メガネ、踏み抜き防止用靴の中敷き、トランシーバー、ビブス洗濯用洗濯機、1t用フレスコ、農業用PP袋、段ボール、受託地図、電話帳など。

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  1-3-2 運営体制

運営主体:厚真町社会福祉協議会

協力:北海道社会福祉協議会、道内各市町村社会福祉協議会、北海道JC北海道、北海道社会福祉士会など、

総務:予算、広報、Facebook 、マスコミ対応、人員管理。

マッチング:依頼、活動内容に応じボランティアを調整。

ニーズ依頼:ボランティア依頼受付、現地調査と調整。

受付:ボランティア受付、電話応対。

資材:資機材の整備、管理。

活動資金:共同募金会災害準備金

企業の紫煙:車両、事務機器の提供、人のボランティア派遣。

全国から:災害支援のスペシャリストの直接活動支援、被災地から経験に基づく助言。

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 1-4 被害の状況

大規模な土砂崩れや路面陥没などで道路が寸断され、厚真町で道道4路線、町道25路線が通行止めとなった。北海道全域停電により車両の運行に支障が生じ、鉄道や空港などの交通機関にも広く運休・欠航が生じるなど甚大な影響をもたらした。

8月に稼働を開始した厚真町冨里浄水場は、裏山の大規模な土砂崩れによりは損壊し配水管の損傷などで町内全域で断水が発生した。さらに、平成31年2月21日の震度6弱の地震で最大111戸が断水した。


 農地への土砂堆積や用水路等の損壊が多数発生し、翌年に完成予定の国営勇払東部かんがい排水事業厚幌導水路も大きな被害を受けた。水稲や畑作物、ハスカップなどの作物にも被害が生じ、林地の大規模土砂崩れにより森林や林道に大きな被害が発生している。

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  1-4-1 被害金額

区分被害金額備考
公共土木施設188億円道路、河川、橋梁、上下水道
農業関係110億円農地、尿業施設、共同利用施設
林業458億円林道、森林被害
その他   67億円商工業、宅地堆積土砂、災害廃棄物
合計823億円

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  1-4-2 人的被害

地震に伴う土砂災害や多数の家屋倒壊等により人的被害が発生した。厚真町では幌内地区で4名、高丘地区で2名、吉野地区で19名、桜丘地区で4名、朝日地区で2名、幌里地区で4名の、併せて36名の方々が犠牲となられた

区分平成30年9月6日平成31年2月21日
 死者       36人36人
 重症          0人   0人
中程度          0人   0人
 軽傷          1人62人
 合計       97人          1人98人

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  1-4-3 建物被害

9月18日より被害家屋の調査を開始して、住家・非住家を合わせて6,618棟の調査を終えている。また、罹災証明書の交付については9月12日より受付を開始し交付を行っている。


 被害調査対象は住家1,836棟、非住家2,782棟の合計4.618棟で、被害調査件数は4,618棟で進捗率は100%となった。罹災証明書交付件数は1,387件となっている。

区分全壊大規模半壊半壊一部損壊被害なし合計
 住家 224      69 249   1.092   202 1.836
非住家 661     161 500      801   659 2.782
 合計 885     230 749   1.893   861 4.618

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  1-4-4 応急仮設住宅

避難所は、避難生活の長期化を予測して大型施設を中心に開設した。9月7日に住民の4分の1に当たる1,118名の方々が避難を余儀なくされた。その後、電気や水道の復旧や応急仮設住宅の建設に伴い徐々に閉鎖し、12月6日には全避難所が閉鎖された。

避難所9/69/710/2411/511/711/3012/6閉鎖日
福祉センター493  613  114  38  49  21    012/6
スポーツセンター  82    93    44  33  32  15    012/6
厚真中央小学校  76  139    22  12    0    11/7
厚真中学校  90    36    14    8    0    11/7
厚南会館130    80      0         11/7
上厚真小学校  23    43    13    0       11/5
鹿沼マナビィハウス    0    14      7    6    5 0   11/30
合計8941.118  214  97   86 36    0 

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  1-4-5 応急仮設住宅入居状況

区分世帯人数入居開始備考
応急仮設住宅125285 第一期:11/1、第二期:11/30
みなし仮設住宅   18   30 9/27
公営住宅   25   55 9/8
トレーラーハウス   11   24 12/27
         合計179394

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  1-4-6 人的支援等の状況

平成30年12月28日現在で各機関からの人的支援状況。

区分延べ人数支援内容
       880国土交通省、気象台、タイムライン
北海道   6,480リエゾン、罹災証明書交付支援、避難場運営支援
市町村   1,530環境業務、物資、水道応急、土木、下水道技術支援
東北6県13,379罹災証明書交付支援、避難場運営支援
自衛隊14,359人命救助、道路警戒、給水、給食、入浴、輸送
警察       750人命救助、警戒活動
消防       500人命救助、警戒活動
合計25,836

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2 ボランティアの受け入れ

 2-1 ボランティアの受付

9月10日~16日:道内者に限り、電話やメールで事前登録して募集人数を調整

9月17日~30日:事前受付メール停止、当日受付性へ移行。

10月以降:道内に限らずWeb事前フォームを通じて事前登録制とし、活動規模に応じて登録者を募集する仕組みを取った

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 2-2 ボランティア活動状況

活動日は、9月中は毎日、10月以降は土曜日と日曜日を中心とした。

1日最大ボランティア数は23人、日・秋分の日は283人。

9月と10月の応援は道社協56人で延べ40人、市町村社協41か所87人で延べ399人。

ボランティア(人)活動件数
累計累計
     93,1933,193682    682
10~111,0144,207261    943
12~  1    3994,606   611,004
   2~  3    1744,780   431,047
   4~  5    1144,894   271,074

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 2-3 ボランティア活動内容

・ 各戸チラシポスティング、マップ作り。

・ 水の運搬配付、避難所清掃、閉所に伴う片付
  け、支援物資運搬、仕分け・整理。

・ 家屋・納屋など片付け及び家財の運搬・整
  理・清掃。

・ 災害ゴミ運びだし・運搬、災害ゴミ集積所積み下ろし補助・分別補助。

・ 炊き出し支援、サロン、つどいの開催支援、トタン直し等家屋の補修。

・ 仮設住宅等引っ越し支援、託児支援援助、郷土資料片付け・整理、倒木除去。

・ ごみ拾い補助、駐車場整理、受付、企画運営等。

・ 薪積み下ろし、崩れた斜面のブルーシート敷設、福祉事務所業務の見守り・話し相
  手の補助。

  外郭団体等と連携しての支援

・ 倒壊家屋等からの家財、貴重品等の取
  り出し。

・ モバイル仮設住宅設置のための環境整
  備(枝切、倒木処理など)

・ 災害ボランティア運営の支援(受付、
  調査、相談、資材管理等)

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3 災害ボランティアセンター

 3-1 行政との連携

  3-1-1 協定の必要性

立ち上げたときに確認することや運営機関など何に基づいて社協が動くのか不明であったため、災害対策本部との連携が取れなかった。平常時に行政と設置手続き、運営方法、センター設置場所、設置経費、運営経費、人的支援などについての取り決めが必要である

  3-1-2 活動拠点場所

発災後、活動拠点となる場所を設置することになるが、なかなか適当な場所が見当たらずに苦慮した。災害の規模を想定した事務所、活動場所などをあらかじめ想定しておく必要がある

  3-1-3 災害対策本部との連携

災害ボランティアセンターが災害対策本部の構成団体となっていなかったことから、被災の全容、ライフライン、道路、危険地域の状況、避難所の情報等の災害情報を得ることができず、手探りで効率的な運営ができなかった

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 3-2 資機材等の準備

何を揃えたらよいのか、揃えるとしても三町による広域災害であることや近隣市町の混乱と停電等のため、調達が難しかった。本会では、協力企業を持っていないため、速やかに調達できる仕組みが必要である。また、地震時には何々、洪水の時は何々といったように準備リストも必要である

長期間に及ぶ断水のため、水の供給ができなかった。ポリタンクも含め近隣市町との連携が必要と感じた

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 3-3 センターの活動

応援社協の協力があっても、地元に精通している者がいあなければ迅速な対応ができない。普段から地元の協力者(防災ボランティア)を登録しておくべきである

本会職員がニーズ受付し、事前の現場確認を行うことにより被災状況を把握することができ、後の生活支援相談活動をスムーズにつなげることができた。また、対応困難なニーズの場合、応援社協が対応することにより、原則を貫くことができた。

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 3-4 その他の課題と問題

・ ボランティア活動の安全確保~余震、倒壊家屋での活動。

・ 守りの情報発信からの脱却、Facebook の役割、求められる情報とは。

・ 見過ごされた被災者、取り残された地域。

・ 被災地域への訪問活動の在り方

・ 詐欺や悪質商法、不審者注意の張り紙で適切な情報発信、マスコミや問い合わせへ
  の対応。(デマやうそ、正確な情報発信、活動のようす、被災者を取材したい。)

※ 巧みな誘導で記者の考えを代弁させられた、私はそんなことを思ってもいなかった
  とボランティアセンターへ伝えられた新聞記事。

・ 地域の治安(ボランティアや支援者を予想不審者への警戒)

・ ニーズが移り変わるスピードへの対応(できたこと、できなかったこと)

・ 幅広い相談内容への対応、多岐にわたる被災内容や程度、優先順位、トリアージ。

・ 災害ボランティア活動の在り方(被災者・ニーズ中心の支援とは )

・ 技術や知識、専門的な機材を要する活動への対応。

・ 支援団体等その連携や情報共有。

・ 社協の限界が支援緒限界にならないような外部支援者等との連携

・ スペシャルニーズへの対応。

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4 生活支援へ

 4-1 生活支援相談員の配置

目的:仮設住宅入居後の孤立防止や生活の困りごとの相談、在宅支援者の訪問活動などを通じ生活復旧を支援する。

体制等:生活困窮者支援事業の制度の枠組みにより、国及び町の補助事業として厚真町社会福祉協議会が平成30年11月より設置。生活相談支援員2名と、統括1名を常勤で配置。外部スーパーバイザーを2名配置して、災害ボランティアセンターと同じ建物に拠点を置く。

活動内容

① 応急仮設住宅、みなし仮設住宅及び在宅被災者への定期訪問。

② 仮設住宅のコミュニティづくり。

 ・ お世話人などの穏やかな自治組織の形成支援

 ・ お茶会、サロン、健康体操の場づくりなど

③ 関係機関の連絡調整

 ・ 仮設入居者連絡会議(11月8日~月に2回開催) 

 ・ ケースカンファレンス(個別ケース支援)

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 4-2 生活支援者相談へ

災害ボランティアセンターを担っていた厚真町社会福祉協議会が生活支援相談を担うことで、被災された方々の課題を幅広く把握することができ、円滑な支援につなげることができた

災害ボランティアセンターと生活支援相談のニーズはクロスしており、連携することで生活支援相談員のニーズ掘り起こしと相乗的に進めることができた。

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 4-3 仮設住宅から地域へ

仮設住宅の入居期限は原則2年となっており、被災者の生活再建が進むにつれて被災者は地域へと戻っていく。被災者が地域へ戻る場所は元々住んでいた地域と限らず被災者が安心した生活を回復するにはコミュニティーづくりが重要である

仮設住宅は近くに見守る人がいて安心だったという方々にとって、傷ついたコミュニティーの回復や、新たな地域づくりを進める必要があり、今後の課題として生活支援整備体制整備事業などの取り組みを連携していく視点が重要である。

厚真町社会福祉協議会では生活支援コーディネーターは一事業も受託していることから、被災者の支援と合わせて地域づくりを進めていきたいと考えている。

右の写真は、札幌市社会福祉協議会主催の災害ボランティアフォローアップ合同研修会のようすです。

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謝辞:文中に掲載しました写真類は、講演中にスクリーンに映し出された写真を加工して掲載しました。有り難うございます。