はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第6章 要援護者支援の取り組み

2009(平成21)年6月29日に開催された防災準備講演会で、2009(平成21年)4月に札幌市保健局がまとめた「災害時要援護者支援の取組み」より「要援護者支援取組み」の要約です。

1 ガイドライン作成の背景

1-1 伏在断層の地震

災害は全国でいつどこで起きても不思議ではありません。しかも、活断層が見つかっていない所でも大きな地震が起きています

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1-1-1 新潟県中越地震

2004年(平成16年)10月23日17時56分に、新潟県中越地方の地下13km地点でマグニチュ-ド6.8の直下型地震が発生しました。震源地の新潟県川口町は震度7、小千谷市や小国町では震度6強、長岡市・十日町市・栃尾市・魚沼市で震度6弱を観測しました。関東地方の埼玉県久喜市や長野県三水村でも震度5弱を観測しています。

本震から1時間の間に震度6が3回も発生、地震発生から5日間で震度5以上の大きな余震が14回発生しました。震源域付近の小千谷市では、地震で地殻が36cmもズレが生じたそうです。

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1-1-2 福岡県西方沖地震

2005年(平成17年3月20日)10時52分、福岡県沖の玄界灘でマグニチュード7の地震が発生し、福岡市内の最大震度が6弱でした。島のほとんどの家屋が一部損壊以上の甚大な被害を受け、重軽傷者あわせて10名の人的被害と、道路の沈下や擁壁の崩壊、地割れなど集落全体にも壊滅的な被害を受けました。

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1-1-3 能登半島地震

2007年(平成19年3月25日)9時42分、能登半島沖の深さ11km地点でマグニチュード6.9の地震が発生し、七尾市田鶴浜町・輪島市門前町・穴水市大町などで震度6強、輪島市河合町・志賀町・中能登町・能登町などで震度6弱が観測されました。地震発生の翌日も4.9~5.3の余震が3回発生しています。

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1-2 阪神淡路大震災のケース

死亡された「6,443人」の九割は瞬間圧死でした。家屋倒壊などで閉じ込められた人は「164,000人」で、129,000人は自力で脱出しましたが、残りの「35,000人」が閉じ込められたままでした。

倒壊した建物の下敷きになったり、家具に挟まれて自力脱出できない被災者「35,000人」のうち、実に77%以上の方々がご近所の方々に救出されていました

・ 公的救助者(消防・警察・自衛隊等)  7,900人(22.6%)
 ・ 付近住民の救出            27,100人(77,4%)

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1-3 ガイドラインの必要性

2004年(平成16年)の新潟・福島豪雨をはじめとする被害の大きかった風水害で、逃げ遅れた103名のうち 67名の高齢者が犠牲となりました。行政の防災部門と福祉部門の連携が不十分で、要援護者情報の共有活用が進まず、避難支援者が決まっていなかったことなどが要因と考えられました。

個人情報の漏洩や紛失を恐れるあまり、要援護者情報が隠匿(いんとく=秘密にすること)され、いざという時に保管場所や存在すら思い出せないことがありました。福祉部門で保管されている要援護者情報が、避難支援に熱心な町内会などへ提供されずに避難支援者の募集もできない状態にありました。

被害者の多くが高齢者や身体にハンディを持つ災害時要援護者であったことから、国は平成18年に「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」等を取りまとめ、地域における要援護者避難支援の体制づくりを促しました。

札幌市も、要援護者対策をより確かなものにしていくため、自助・共助・公助の役割を明らかにしながら、災害時要援護者支援に向けた基本的な考え方をまとめ、具体的に実践していくための一般的な手立てを示して、地域における取組みの指針とすることを目的としてガイドラインを作成しました。

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1-3-1 対象となる高齢者など

2009年(平成21年)1月1日現在の札幌市人口は190万人です。

・ 老齢人口           363,000人(住基ベース)
・ 要介護認定者数         47,000人(要介護1~5)
・ 身体障害者手帳所持者数     78,000人
・ 療養手帳所持者         11,000人
・ 精神保健福祉手帳所持者     12,000人

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1-3-2 検討委員会での論点

検討委員会では、必要な取組みとの認識があっても様々な問題があげられました。

・ どのような災害を想定するのか
・ 個人情報に敏感、情報収集が難しい
・ 町内会等へ加入していない人がいる
・ 民生・児童委員、教育関係者等の協力は
・ 得られるのか避難場所の開設・運営はだれがどのように行うのか

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1-3-3 ガイドラインのねらい

要援護者対策をより確かなものにするため、ねらいを考えました。

・ 自助、共助、公助の役割を明らかにする
・ 支援の基本的な考えをまとめる
・ 実践のための一般的な手立てを示す

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1-3-4 要援護者支援者の定義

要援護者は、「災害時に、自力や家族の力だけでは避難できないため、地域に支援を求めている人」と定義しています。高齢の方や障がいのある方、妊産婦や乳幼児、児童、外国人も含まれます。

このような要援護者の避難支援や、避難所生活における手助けを地域住民が行うことが災害時要援護者避難支援です。いざという時に、誰(支援者)が誰(要援護者)を支援するかを事前に決めておくことが大切になってきます。

要援護者に該当する方々を具体的にあげると、三つのグループの属する方々が対象となります。

・ 高齢の方  一人暮らし、寝たきり、認知症の方など

・ 心身い障がいのある方  視覚・聴覚・言語・肢体不自由、内部障がい、精神
             障がい、知的障がいの方など

・ 状況によって手助けが必要となる方  妊産婦、乳幼児・児童、外国人など

要援護者は次のように細分化して、適切な対応ができるように配慮します。

・ 行動弱者  自力で移動したり、体を動かしたりすることが困難な人

・ 情報弱者  聴覚や視覚に障がいがある人や日本語を話せない外国人など

・ 補装具   身体の不自由な人の行動を補助するために、身体に装着(装用)す
       る器具や装置

・ 内部障がい 外見ではわかりにくい、心臓機能、腎臓機能、呼吸器機能、ぼう
       こう・直腸の機能(ストマ保有者など)、小腸機能、HIVによる
       免疫機能等の障がい

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1-3-5 避難支援の基本

一刻を争う事態では、行政の支援は間に合いません。地域の主体的な対応がもっとも重要であることが、阪神淡路大震災などの教訓から明らかになっています。要援護者とその家族が助け合う「自助」、近所や地域の人たちが共に助け合う「共助」が重要です。

要援護者の避難支援の取組みは、被害を未然に防ぐための備え「防災」と、万一の被害を想定して少しでも被害を軽減しようとする「減災」の努力を考え方の基盤に置くことが重要です。いつ発生するか予想できない災害への備えは、継続的な取組みとして地域に定着させていくことが望まれています。

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2 ガイドライン作成の背景

2-1 きっかけづくり

要援護者支援について多くの人々は「いままで、あまり考える機会がなかった」「大切だと感じているが、何をどうしていいかわからない。」という状態ではないでしょうか。

きっかけがなければ人は動きません。ご近所の方々への声かけからはじめて一人でも多くの方々を防災訓練へお誘いし、まち歩きへの参加を要請して多くの人々の目で危険箇所や安全な経路を確かめ、共通理解を深めるために防災マップづくりを行います。

さらに、札幌市民防災センターの震災体験で心構えを養い、札幌市防災表彰された団体やマンション管理組合、札幌市の災害時要援護者避難支援モデル事業に取り組んでいる町内会などを視察して機運を盛り上げていきます。

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2-2 支援母体の編成

支援母体をつくるイメージとしては、まず既存の組織がきっかけづくりを行い、要援護者支援の準備をはじめます。既存の組織が要援護者支援活動を行いながら支援母体を形づくり、支援母体を中心とした協力関係づくりへと発展させていきます。

支援の母体となる既存の組織は、自主防災組織・単位町内会・自治会・福祉推進委員会などが考えられ、普段から隣近所の結束した取り組みが必要です。

支援母体は、ボランティア団体・高齢者団体・福祉推進委員や住民協力員・民生委員や児童委員・近隣住民などを包含して、地域の防災・減災資源の活用を検討しながら要援護者を支援できる体制を組んでいきます。

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2-3 地域のルールづくり

地域で支援の取組みを進めていくにはに、支援母体や要援護者情報の収集方法、支援内容や支援者の選出方法などについてのルールが必要になります。ルールづくりは、一人ひとりの要援護者の状況や、住民組織と活動内容、活用できる地域資源の状況などを踏まえて、地域の話し合いにより進めていくことが大切です。

要援護者情報は個人情報ですから、取り扱いのルールを明確にお知らせすることが大切です。

・ 利用の目的を明らかにします

・ 情報取得に関するルールを明らかにして周知します

・ 情報を管理するルールを明確にします
   適正で安全な管理(情報の範囲・管理者・保管方法など)
   第三者への提供(非常事態を除き、本人の同意が必要)
   情報開示の求めに応じる(開示・訂正。利用停止・返却)

・ 情報を更新します

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2-4 要援護者の情報収集

要援護者の情報は、一番身近な地域が主体になって収集することが基本です。要援護者がどこに住んでいるのか、どのような支援を必要とするのかなどについては、要援護者本人の理解と同意を得ながら進めていくことが原則です。情報の収集の進め方として、次のような方法が考えられます。

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2-4-1 手上げ方式

要援護者支援についての内容をお知らせし、自発的に手を上げるように呼びかける「手上げ方式」を基本とします。支援に必要な基本情報は、「登録カード」等に本人(または家族)が記入し、これを支援母体で厳重に保管します。

要援護者が町内会に加入していないことも考えられます。すべての世帯を含めた地域全体への呼びかけが必要となります。

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2-4-2 同意方式

要援護者本人に直接お会いして説明し、同意を得たうえ必要な情報を収集する「同意方式」も併用します。民生委員・児童委員、福祉推進員、障がい者団体ネットワークなどの協力を得るのがよいでしょう。

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2-4-3 行政情報の活用

手上げ方式や同意方式でも漏れる要援護者の情報は、行政が保有する情報を緊急時に地域と共有することも考えられます。このような場合は慎重を期して、地域の情勢や個人情報の取り扱いに熟知した退職地方公務員の協力を求めることも大切です。

基本的な考え方はつぎの三つです。

・ 要援護者に一番身近な地域が主体となる

・ 本人と家族の理解と同意を得ながら進める

・ 日頃から支援者と要援護者とで理解を深めることが重要

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2-4-5 支援者の募集

要援護者は緊急時に自力で素早く避難ができず、災害情報を入手できずに助けを呼ぶこともできないなど、行動や情報などで様々な困難性を有しています。支援者は、要援護者の情報収集と同時に手上げ方式で募集します。ボランティア活動ですから一番望ましいのは自発的な申し出です。

要援護者の避難支援は、要援護者の近くに居住している方が適します。災害情報を直接お知らせしたり緊急時に避難のお手伝いをするのは、可能な限りご近所にお住いの方が望まれます。

支援者が少ない場合は、支援母体がお願いの相談に加わる「お願い方式」、支援母体が推薦して相談に加わる「ノミネート方式」、支援母体が中心になって声かけや相談に加わる「ボランティア方式」などがあります。

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2-4-6 災害別の対応

災害によって避難支援の取組み手順や対応は異なります。要援護者の支援にあたっては、災害ごとの対応の違いを踏まえておくことが必要です。

風水害は、避難準備情報の発令などにより避難行動が始まるので、事前の準備や対応が可能です。地震などの突発的な災害は、初動期における避難支援はもちろん、安否確認や被災者の救援活動が中心になることが考えられます。

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2-4-6-1 風水害の場合(準備時間がある)

ア. 大雨などの気象状況が悪化 ⇒ 行政は「避難準備情報・避難勧告」を発令

イ. 支援者 ⇒ 要援護者へ「避難準備情報・避難勧告」のお知らせ

ウ. 行政は「避難所開設」を周知

エ. 支援者は要援護者と共に避難開始

オ. 避難所では、女性の視点で「思いやり」

カ. 安否の確認後、避難所の自主運営組織の立ち上げ

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2-4-6-2 地震の場合(準備時間がない)

ア. 地震発生 ⇒ まず安全確保(自分の体・家族の体・要援護者と隣近所の安否)

イ. 行政は「避難所開設」を周知

ウ. 支援者は要援護者と共に避難開始

エ. 避難所では、女性の視点で「思いやり」

オ. 救助活動に協力

カ. 安否の確認後、避難所の自主運営組織の立ち上げ

災害発生時から避難所での生活や災害復興に至るまで、多くの人々が参画して互いに支え合う取組みが大切になります。避難所での生活では、近年の大震災等の被災経験を通じて、女性特有の細やかな心遣いが重要視されてきています。

一人暮らしの高齢女性、妊産婦、乳幼児をかかえた母親など、要援護者の避難生活の支援にあたっても、女性のやさしさや細やかな心配りで進めていくことが大切です。また、平常時においても女性の視点を十分に取り入れ、日ごろから災害に備えた環境づくりを図っていくことが大切です。

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3 関係団体との連携

支援者個人や支援団体だけの取り組みには限界があります。情報を収集するには関係者からの働きかけが必要となり、支援内容の充実を図るには専門性を有する人の協力も必要です。

・ 支援母体と連携する団体
    連合町内会・まちづくり協議会・地区社会福祉協会など
    市役所・区役所・保健福祉局・危機管理対策室など

・ 地域の専門性や設備を備えた施設
    病院などの医療機関・社会福祉施設・保育園・幼稚園・福祉専門学校など
    小規模作業所・通所授産施設など

・ 要援護にかかわっている団体
    要援護者団体(障がい福祉団体)など
    福祉サービス事業者(ケマネージャー)など
    専門性を有する人や組織(身障者相談員・精神保健関係団体)など

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4 身近な資源の活用

災害発生時の被害を軽減して避難行動や避難生活を乗り切るためには、地域に住まわれている専門的な知識や技能を持つ人材や、機材・施設など身近にある地域資源の活用が重要な要素となります。

こうした人材や地域資源を日ごろから把握し、災害時には協力いただけるように協定などを結んでおくこと必要です。

・ 人材
    医療関係者や介護関係者など
    重機免許の取得者など

・ 機械・器具
    重機・工具・ジャッキ・バール・台車・リヤカー・一輪車など

・ 施設
    空き地・病院など
    AEDなどの医療器具

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5 冬季の災害に備える

5-1 地域資源の活用

地域で営業している企業や事業所などの資機材は、災害時に役立つ貴重な防災・減災資源となります。いざという時にそれらの資源を活用できるよう、企業等の協力いただけるように協定などを結んでおきましょう

・ 寒さ対策
    大型暖房器具の確保、移動可能な暖房の確保、寝袋、シング、防寒具など

・ 除雪対策
    除雪車、ダンプなどの車両

・ 除雪器具
    除雪機、スノーダンプ、スコップなど

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5-2 身近な避難場所の確保

冬季の災害時に、学校などの避難場所まで移動することが困難な場合もあります。このような場合は、地域にある集会施設や企業の社屋、ファミリーレストラン、ショッピングセンターなど、身近な施設を天候が落ち着くまでの間の応急的な避難場所として活用できれば幸いです。災害時に困らないよう、施設の管理者や企業などと災害時における協力いただけるように協定などを結んでおきましょう

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5-3 寒さ対策の準備

北海道では特に寒さ対策の充実が求められ、避難所の暖房設備が停電や故障で使用できない場合や、高齢者や障がい者などにとって生活環境が厳しくなる場合は、毛布や寝袋などの備蓄物資、寝具・防寒具、移動可能な暖房の確保が重要です。

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6 要援護者の取り組み

6-1 日頃の取り組み

災害が発生した時に身の安全を確保して被害を最小限にするには、自分の命は自分で守るという気持ちを持って、日ごろから自分(家族など)でできる災害への備えをすることが重要です。

もっとも重要な安全対策は家具などを固定することです。過去の大震災で多くの人々は家具の転倒で被災しました。いつも服用している医薬品や生活必需品の備蓄、障がいの状況を第三者に伝えることができる身分証明書や身分証などの携帯も重要です。家族と連絡をとる複数の方法を打ち合わせ、近い避難所の事前確認を行うなど、事前にしっかりと取組んでおくことが大切です。

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6-2 隣近所との交流

日ごろから、隣近所など身近な人たちとのコミュニケーションを大事にし、防災訓練や地域の活動などにも積極的に参加して、自分や自分の障害の程度(なにができないのか)をよく知ってもらうことが大切です。

災害が発生したときは被災者に挨拶や優しく声をかけ、自らの知識や経験に基づいて同じ立場の被災者に対して「できること」があれば、積極的に手を上げて協力することも必要です。

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